日本の賃金を歴史から考える の感想
参照データ
タイトル | 日本の賃金を歴史から考える |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 金子良事 |
販売元 | 旬報社 |
JANコード | 9784845113378 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論 |
購入者の感想
内容は「二つの賃金」「工場労働者によって形成される雇用社会」「第一次世界大戦と賃金制度を決める主要プレイヤーの登場」「日本的賃金の誕生」「基本給を中心とした賃金体系」「雇用類型と組織」「 賃金政策と賃金決定機構」「社会生活のなかの賃金」の8章から構成されている。この構成からも明らかなように本書が織りなす図柄は、賃金を横糸としつつも広くわが国の雇用労働分野の全体像を歴史的な変遷から捉えかえしている。賃金制度は労使関係を映し出す鏡のようなものであり、その意味で本書は、わが国の労使関係あるいは雇用システムの史的展開をも照射する一面を有している。またそれのみに止まらず、著者の関心はそれぞれの時代における労働法制、雇用政策そして労働経済へと広がりを見せている。
経済学の世界においては、ややもすると賃金や雇用を無機的な変数としかみない机上の数理モデルから政策を導く手法が長く主流を占め、それが労働経済分野にも適用されることで、雇用流動化や労働規制の緩和など働く者の尊厳を損なうような政策が蔓延している。それとは好対照に著者の分析視角は労働現場の実態重視に貫かれ、一筋縄では解けない「賃金とは何か」「何故賃金が重要なのか」の問に対して丹念に史料に当たり、先行研究や史料の少ない分野にも臆さず光を当てながら、賃金の歴史の中に解を求めようと試みている。もとより本書は主流派経済学の手法を問題にしている分けではないが、賃金を基軸に経済社会の根幹をなす雇用や労使関係の実態を捉えようとする接近法を著者と共有するとき、主流派経済学における形式論理の不毛な呪縛から解放されることは間違いない。
今の時代にあって賃金についての適切な教科書となりうる書物は極めて少ない。明治期から現代に至るさまざまな賃金制度の考え方を紹介しながら、その背景にある企業の経営思想や労働者の生活観にも踏み込み、結果として構成されたそのときどきの雇用システムとの関わりも明らかにしようとしているのが本書の特徴であり、私たちが日ごろ分かったつもちになっていることや安易に前提としている事柄についても、新たな知見を与えてくれる記述が随所に散りばめられている。
経済学の世界においては、ややもすると賃金や雇用を無機的な変数としかみない机上の数理モデルから政策を導く手法が長く主流を占め、それが労働経済分野にも適用されることで、雇用流動化や労働規制の緩和など働く者の尊厳を損なうような政策が蔓延している。それとは好対照に著者の分析視角は労働現場の実態重視に貫かれ、一筋縄では解けない「賃金とは何か」「何故賃金が重要なのか」の問に対して丹念に史料に当たり、先行研究や史料の少ない分野にも臆さず光を当てながら、賃金の歴史の中に解を求めようと試みている。もとより本書は主流派経済学の手法を問題にしている分けではないが、賃金を基軸に経済社会の根幹をなす雇用や労使関係の実態を捉えようとする接近法を著者と共有するとき、主流派経済学における形式論理の不毛な呪縛から解放されることは間違いない。
今の時代にあって賃金についての適切な教科書となりうる書物は極めて少ない。明治期から現代に至るさまざまな賃金制度の考え方を紹介しながら、その背景にある企業の経営思想や労働者の生活観にも踏み込み、結果として構成されたそのときどきの雇用システムとの関わりも明らかにしようとしているのが本書の特徴であり、私たちが日ごろ分かったつもちになっていることや安易に前提としている事柄についても、新たな知見を与えてくれる記述が随所に散りばめられている。