現代秀歌 (岩波新書) の感想

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参照データ

タイトル現代秀歌 (岩波新書)
発売日販売日未定
製作者永田 和宏
販売元岩波書店
JANコード9784004315070
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 詩歌 » 詩論

購入者の感想

永田和宏氏による待望の現代短歌ガイドである。前作「近代秀歌」からわずか1年9か月で本書を得たことを喜びたい。本書においても100首を選んで紹介しているが、その選択の基準は前作とは大きく異なっている。「近代秀歌」は、「日本人ならせめてこれくらいは知っておきたい」の基準で100首が選ばれたので、斎藤茂吉の11首を筆頭に1人で複数の歌が選ばれるケースが多かった。しかし、「現代秀歌」においては「恣意的な要素が入ってこざるを得ない」ことを承知で永田氏が100人の歌人とその代表歌を選び、「現代の百人一首」を完成させている。同じ歌人の他の歌や関連する歌も紹介しているので、本書に収録された歌の数は全部で300首ほどに達する。私にとっては初めて接する歌も多くあった。

1章の「恋・愛」からはじまって2章「青春」、3章「新しい表現を求めて」とテーマごとに10の章に分けて歌を紹介している。取り上げられた歌の解説、批評に合わせて各歌人の簡潔なプロフィルが記されている。1首について1〜2ページの紙面ながら歌人の生き様や彼等が歌に託した思いを人物像や情景が浮かぶように表現する永田氏の文章の巧みさは感嘆するばかりだった。たとえば、中城ふみ子の歌の解説は次の通りである。

もゆる限りはひとに與へし乳房なれ癌の組成を何時よりと知らず  歌集「乳房喪失」

中城ふみ子は、中井秀夫に見出されたが、2度の乳がん手術を受けた後に歌集「乳房喪失」を残して死去した。わずか数か月の歌壇デビューであった、と永田氏はプロフィルを書く。続けて、「『もゆる限り』は、大胆な歌である。愛のよろこびに燃えるなら、自らの乳房もその燃えるかぎりを人に与えてきたと詠う。…その燃える乳房に、いつの頃からか癌は巣食い始めたのであろうと詠うのである。愛と性、そして病と死、それらをすべて見つめ、肯定的に自らのなかに取り込もうとするかのような奔放さと大胆さが、歌壇に大きな衝撃となって走った。」と結ぶ。

多くの掲載歌から私が胸打たれた歌の一部を以下に挙げる。

海を知らぬ少女の前に麦藁帽のわれは両手をひろげていたり  寺山修司
かきくらし雪ふりしきり降りしづみ我は眞實を生きたかりけり  高安国世

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