5年後、メディアは稼げるか――Monetize or Die? の感想

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タイトル5年後、メディアは稼げるか――Monetize or Die?
発売日販売日未定
製作者佐々木 紀彦
販売元東洋経済新報社
JANコード9784492762127
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » マスメディア » メディアと社会

購入者の感想

【概要】
(分野)ジャーナリズム、業界分析
(頁数)204頁
(出版日)2013/7/19

 本書では、「東京経済オンライン」編集長である著者が、現在起きているメディア業界の「IT化」が、どの様にビジネスを変えているかについて、当事者である筆者の熱意と共に述べられます。
 「こういう記事は、こう書かないと読者がつかない」的な、同業者に向けてのメッセージ性が強い本書ですが、私達が日々接する「情報」の作り手が、「財政的」、「質的」にどの様な状況にあるのかを知る上で、大変示唆的な内容を含んでいると思います。

【内容】
~インターネットを駆使するIT企業が既存メディアを駆逐している~

 本書の前半では、今までメディアの専売特許であった「情報」が、インターネットの普及によって相対的に価値が下がって来ており、ここ10年に至って新聞や雑誌などの既存メディアとのパワーバランスが逆転して来た経緯が述べられます。
 また、こうした時代には、一過性の記事は価値を生み出しにくく、数ある情報を上手く「編集」し、納得できる独自の視点を読者に与えられる記者だけが生き残れるのだと、数々の事例を挙げながら述べられます。

~欧米のメディア業界の苦心~

 中盤では、いち早くこうした変化に見舞われた欧米のメディア業界が、一時的に壊滅的な影響を受けたことが述べられます。
特にアメリカのメディア業界は、財政基盤を広告収入に大幅に頼っています。しかし、GoogleやYahoo !、更にはFacebookなどの、本当にここ10数年に出来たIT企業がメディア業界の広告市場を駆逐していった結果、一気に存亡の危機に追い込まれます。

 追い込まれたメディア業界が、「原則無料」が常識のインターネットを通じ、自らを「IT化」、そして不得手の「オンライン版」を創設する中で、いかに自分たちの提供する「情報」を「金を払う価値がある」と感じてもらえるか、様々な試行錯誤をしていることが記されます。

単行本というより新書を連想するような気軽でタイムリーなタイトルに惹かれ、そしてkindle版の格安価格(特に格安な日替わりセールで購入)につられ読むに至った読前の意気込みは少ない本。著者のキャリアを購入に足る品質保証として保守的に手に取った部分も大きい。完全に僕の主観だが、この本は三部構成になっているように感じた。
まず序盤では主に新聞と雑誌のウェブ化とその変遷、そして現在の業界地図を網羅的にかつ客観的に読者へ把握させてくれる。ここは筆者の経済誌編集者の経歴よろしく非常に明瞭なレポートとなっている。ただしここからは、いみじくもネットで拾える情報を常に一ユーザーとしてチェックしつなぎ合わせれば十分把握できる範疇を脱しなかった感否めず、活字や数値、図表が入ってきては流れてしまい残るものが少なかった。
正直「すこし内容が浅いかな」とがっかりしながら続く中盤。ここでは序盤で丁寧に説明してくれた本書テーマ背景を元に、より踏み込んだ各新聞や雑誌の特徴を器用にカテゴリー分けしながら、それぞれが持つ個性と勝因、そして同時に抱える課題(問題点や短所ではなく)という切り口で、どっぷりと浸かる当事者視点を織り込みながら読者を一歩奥に誘ってくれている。序盤より書き手の実体験や独自の解釈を垣間みられたことで、読み手の僕も少しずつ著者の描く世界に引き込まれ始めた。
そして終盤。「ここまで辿り着けず読むのを止めてしまう人がいたらどうするの」と心配するほど著者が主張と情熱のペースを上げてくる。終盤に関してはほとんどの内容が“デジタル”や“メディア”と無関係のいかなる業界に籍を置いている人も通じるであろう著者の『仕事観』が感じられ、僕は、ここにきて溢れ出た著者が持つメディアへの愛と情熱こそが、東洋経済オンラインにおける彼の快進撃を支えているのだろうと断じるに至った。新聞記者を、そして雑誌編集者を専門職なる聖域に安住させることなく、ビジネススキルやITリテラシー、そして起業家精神とハイブリッドさせることで、これからの時代を担う業界の垣根を越えた次世代リーダーの姿がおぼろげながら姿を現す。

たしかにタイトルに惹かれました。『東洋経済オンライン』編集長という肩書きも目を引きました。
しかし買って読んでみると、どうも深みがなく、若くて元気のよい優等生が勢いに乗って出版しました、という以上の印象はありませんでした。
辛口ですみませんが、本当に泥の中で生きてきた人、戦ってきた人の「芯」が感じられるような文章を今後期待したいです。

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