怪しい来客簿 (文春文庫) の感想

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参照データ

タイトル怪しい来客簿 (文春文庫)
発売日販売日未定
製作者色川 武大
販売元文藝春秋
JANコード9784167296049
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » あ行の著者

購入者の感想

私は娯楽作家としての阿佐田哲也氏の大ファンなのだが、色川氏の作品は何となく敬遠していた。阿佐田氏ではなく色川氏に直木賞が行った事が不満だったのだ。しかし、もっと早く読めば良かった。

「怪しい」と言うよりは、自身の戦争体験記や不遇に終った勝負師・芸人や社会の片隅で生きる知人達の有様を纏めたものだが、全体として昭和初・中期の世相(特に大衆芸能)を記録して置きたいと言う意図もあったと思う。自身も若い頃勝負師として生きた色川氏には社会の裏側で生きているとの自覚が強く、その分、登場人物への同情と愁いの色が濃い。特に、「したいことはできなくて」は著者の人生を主人公のそれと重ね合わせて悲壮感が漂う。一方では、ユーモア溢れる語り口を用いる等、自在の筆運びである。何より読者の共感を呼ぶのは、人生に絶対の価値観を置いていない点で、これも人生、あれも人生と、良い意味での開き直りを見せている。著者は「自然児」と自称しているが。その分、人生の機微が見事に描き出されている。例えば、「とんがれ」は起承転結が巧みで、短編小説のよう。"存在"に意味を持たせず、人生の定理と捉えている点も印象深い。互助の否定と寛大の勧めも胸に残る。

本作中で一番「怪しい」のは冥界を背負っているかのような著者自身なのだが、その著者が枯淡と描く様々な人々の姿は読む者の人生観を揺さぶるものがある。やはり、色川氏の書く物も面白いと認識させられた。

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