計算がらくになる実用数学 の感想

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　この本は「算術の秘伝の書」です。まさに今、大人達が欲している技術を書いている本ではないでしょうか。
　教育制度の問題への関心の高まりや、知能・教養ブームの影響を受けてか、
算数の能力が注目を浴びているように思えます。
　しかし実際、昨今出版されている、「計算」と題する本には、「算数の能力を高める」という目的にかなうものが少ないのが現実です。
　計算の裏にある理屈を解き明かす本があります。また、計算をこなすことで能力を向上させることを目指す本があります。しかし、計算の手順を、こと細かに指導してくれる本は皆無といってよいくらい少ないのです。児童向けの学習書にまで遡れば、確かにこうした手順を教えてくれる本はあるでしょう。しかし、そのような本は、大人が読むには抵抗があるものです。
　したがって小学校時代に算数の勉強を怠けてしまった人（私はそうです）、また中学校受験を経験しなかった人などは、数字を速く正確に操作するための技術を、とうとう身につけぬままで終わるのだと、なかば諦めているのではないでしょうか。
　この本はまさにそうした「能力の隙間」を埋めるのにぴったりの課題を用意してくれています。速算法の内容はもとより、「1分以内で計算しなさい」といったスピードアップの課題まで設けてくれ、やる気を起こさせます。数字を入れかえれば自分で作問することも容易です。就職試験などで、解法以前に計算でつまづいた経験のある方、仕事上でのちょっとした計数に対し抵抗ある方には絶対におすすめです。
　私はとにかく計数が苦手でした。それは才能の欠如だと思っていました。ですが今ではそれは違うと思っています。この本の紹介するような技術を、練習したことがなかっただけなのです。