凍りついた香り (幻冬舎文庫) の感想

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参照データ

タイトル凍りついた香り (幻冬舎文庫)
発売日販売日未定
製作者小川 洋子
販売元幻冬舎
JANコード9784344401365
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » あ行の著者

購入者の感想

著者らしい、死者と生者をつなぐ記憶の物語。いくつかのキーワードを手がかりに主人公・涼子は彼女の知らない死者の過去を求めてチェコまで旅をする。死者はなぜ栄光の人生のレールから自らおりたのか、最後に謎が氷解するプロットが冴えている。

ひたすら過去に遡るようでありながら、死者の運命は定められていたものと受け止め、主人公が前向きに生きる予感を漂わせるエンディングに光がさす思いがする。

孔雀の番人のようにこの世とあの世の接点に静かに佇む人(?)も登場し、ファンは静かで伝奇的な小川ワールドを満喫できるが、決してマンネリではない。本作では、上記謎ときの仕掛けの他に、香り、スケート、チェコでの彷徨等の要素が読者の感覚を心地よく刺激する。

注目すべきは数学の美に対する称賛。「博士の愛した数式」に至る道程の始まりだ。

あるコンテストで用意するチョコレートの総量を求める、計算式を使わない解法は実にエレガント。これを美しいと思う感覚を共有できるのが著者の作品を読む大きな楽しみだ。

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