「肌色」の憂鬱 - 近代日本の人種体験 (中公叢書) の感想
参照データ
タイトル | 「肌色」の憂鬱 - 近代日本の人種体験 (中公叢書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 眞嶋 亜有 |
販売元 | 中央公論新社 |
JANコード | 9784120046278 |
カテゴリ | ジャンル別 » 人文・思想 » 文化人類学・民俗学 » 文化人類学一般 |
購入者の感想
著者は、近代化(西洋化)を追求し、日露戦争の勝利以降、いわゆる「一等国」の地位を手に入れるも、「文明」と「人種」のはざまで揺れ動く日本人の不安定さを、近代化の最前線にいたエリートたち(内村鑑三、夏目漱石、埴原正直、石橋湛山、田口卯吉、有島武郎、寺内正毅、野村みち、その他多数)の体験をもとに論じている。欧米と対峙し、日本人の体格の「貧弱さ」と外見の「醜悪さ」に気づき、「黄色人種」であることの居心地の悪さに苦悩する日本人エリートたちの姿が描かれている。また、それが単なる人種的差異の問題ではなく、「文明」の問題でもあることも、彼らに見られた、「不潔」で「教養」のない「同胞たち」(中国人や日系移民)への蔑視を描くことで明らかにされている。本書を通じて、評者は、20世紀初頭の日本のエリートたちが目指したのは、「脱亜入欧」ならぬ、「脱黄入白」(著者の言葉ではなく、評者の造語)だったのではないか、という見通しを得た。
ただし、本書で紹介されているエピソードの多くは、どこかで聞いたような、ありふれたものばかりで、他のレビュアーも指摘するように、オリジナリティ不足という感は否めなかった。
ただし、本書で紹介されているエピソードの多くは、どこかで聞いたような、ありふれたものばかりで、他のレビュアーも指摘するように、オリジナリティ不足という感は否めなかった。