アメリカ自動車産業 (中公新書) の感想

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タイトルアメリカ自動車産業 (中公新書)
発売日販売日未定
製作者篠原 健一
販売元中央公論新社
JANコード9784121022752
カテゴリジャンル別 » ビジネス・経済 » 産業研究 » 自動車・機械

購入者の感想

本書では、GMの隆盛から破綻、再生までの歴史を縦軸に、トヨタ生産方式との比較を横軸にして、人事評価、賃金、職場改善、労組などのトピックを取り上げている。

米国の職務給制度と日本の職能給制度がこれほどまでに大きな差異を生み出してきたという点は発見だった。職務給ではJob Descriptionに基づく職務遂行に対して賃金が支払われ、seniorityに基づく賃金差別くらいしかないのに対し、職能給では毎期の査定があり、生産現場でも厳しく能力主義が貫かれる。つまり、予期に反して、少なくとも生産現場では米国=年功主義、日本=能力主義の色が強い。そのためQC活動等、職場小集団による自主活動への身の入り方も日米で全然違う。

面白かったのは、戦後の占領時代にGHQが日本にも職務給制度を導入させようとしたのだけれど、当時労働省にいた楠田丘氏(職能資格制度の生みの親として有名)が、職務給制度の日本企業への導入に違和感を感じ、それが、のちの職能給(職能資格制度)の誕生につながったという話。仮に職能給がすんなり日本に導入されていたら、日本の製造業は今のような姿にはならなかっただろう。

GMは、トヨタとの合弁工場であるNUMMIを通じてリーン生産方式、Just In Timeを学ぶことはできたが、日米の自動車産業の根本的な差異が人事制度に由来することまでは学べず、チャプターイレブン適用に至ったという次第。その背景にあるUAW(全米自動車労働組合)の運動の分析なども興味深い。

本書は、全般的に日本の自動車産業が制度的に優越しているという論調で書かれている。負の面のほうも気になる向きは、鎌田慧『自動車絶望工場』も合わせて読まれたい。

本書はビッグ3(GM、Ford、Chrysler)と日系自動車メーカーの労使関係を比較して、アメリカ自動車産業の実態を浮かび上がらせた本です。本書を読んで驚いたのが、アメリカの自動車工場(特にブルーカラーの職場)では能力主義ではないということです。そのことが足を引っ張り、ビック3が経営破綻に追い込まれたのかとよくわかりました。一方で本書は労使関係しか取り上げていません。自動車需要や生産計画などにも触れてもらいたかったと感じました。
自動車産業に関心がある方はもちろん、日米間の労使関係に興味がある人にオススメです。

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