淀川長治 究極の映画ベスト100〈増補新版〉 (河出文庫) の感想

　数ある映画ガイド本のなかでも、とりわけクラシック映画のビギナーに安心しておすすめできる良書。
　見開き２ページに１本の映画を紹介し、あらすじと解説が簡にして要を得ている。
　淀川さんの深い教養に裏づけられた鑑賞の非凡さが言葉のはしばしにあらわれているので、読者は映画の見かたの奥義を気軽に学ぶことができるだろう。

　ただし厳密にいっておくと、これは淀川長治選の１０００本から岡田喜一郎さんが１００本を選んだ本ですね。
　もしも淀川さんがみずからベスト１００を選んだとしたら、おそらく戦前のサイレントやモノクロ作品の占める割合がもっと増えていたはずだ。

　とはいえ、バランスよくまとまった内容であることはまちがいない。
　巻末付録のキネ旬年間ベスト５などのアンケート類も貴重で興味深いものだ。

本書は、元祖映画の伝道師ともいえる淀川長治の、あの名調子を再現した『淀川長治 究極の映画ベスト100』の増補新版である。ここで、例を挙げられない程の映画の急所を押えながら、その映画の見所を語ってくれる・・・それに素直に納得してしまう私。淀長さんは、幼児期に観た映画から全て覚えている人なんである。巻末に索引＋種々のベスト5アンケート類が増補されている。現在の殆どの映画解説は素人が身の程も知らずにやっている。
“サヨナラ、サヨナラ”が懐かしいネ。