皇帝フリードリッヒ二世の生涯 下 の感想
参照データ
タイトル | 皇帝フリードリッヒ二世の生涯 下 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 塩野 七生 |
販売元 | 新潮社 |
JANコード | 9784103096382 |
カテゴリ | » 本 » ジャンル別 » 文学・評論 |
購入者の感想
中世ヨーロッパに政教分離と法治国家という概念を確立し、30年の間、実際に国家運営を果たした偉大な皇帝の生涯を描く、下巻になります。治世最後の10年間も、フリードリヒ2世排除に執念を燃やす歴代法王による執拗な画策、それにともなう臣下の裏切りに直面しつつも、この天才はその知が及ぶ限り、すなわちその生の限りは負けることなく、「パクス・フレデリチアーナ」を堅持し続けます。しかしながら、その死後は、かつてのローマ帝国のように覇権を維持することはかなわず、ホーエンシュタウフェン王朝は終焉を迎えることになります。
塩野七生氏が45年前から書きたかったと語り、そして遂に書きあげられた本作品、300冊を優に超える英語、イタリア語、ラテン語の資料や現地を訪れて書かれた内容は非常に説得力があります。中世ヨーロッパで、ローマ法王に皇帝や王の上に立つ、権威や大義名分を与える役割を果たした「コンスタンティヌス大帝の寄進書」。長く権威と信じられてきたことに対してもまずは疑ってみる態度も、その正否を明らかにするための実証主義も、ルネサンス精神の最たる特徴である、との看破は、氏の研究と主張の真骨頂と感じました。それ故に、まだルネサンス精神が萌芽しきっていなかったこの時代、フリードリヒ2世という個性が亡くなった後に、彼の理想とする国家を維持することは、さらに優秀な後継者がいたとしても難しかったのではないか、というやや悲しい諦めと納得にもつながります。
塩野七生氏が愛した3人のイタリアの偉大な男たち、ユリウス・カエサル、フリードリヒ2世、チェザーレ・ボルジア。偉大な変革を志し、その能力を持ち合わせたことでは共通する3人ですが、その最期と変革の行く末は3者3様。しかしながら、フリードリヒ2世が、大変魅力的な偉人であることは、間違いがありません。
塩野七生氏が45年前から書きたかったと語り、そして遂に書きあげられた本作品、300冊を優に超える英語、イタリア語、ラテン語の資料や現地を訪れて書かれた内容は非常に説得力があります。中世ヨーロッパで、ローマ法王に皇帝や王の上に立つ、権威や大義名分を与える役割を果たした「コンスタンティヌス大帝の寄進書」。長く権威と信じられてきたことに対してもまずは疑ってみる態度も、その正否を明らかにするための実証主義も、ルネサンス精神の最たる特徴である、との看破は、氏の研究と主張の真骨頂と感じました。それ故に、まだルネサンス精神が萌芽しきっていなかったこの時代、フリードリヒ2世という個性が亡くなった後に、彼の理想とする国家を維持することは、さらに優秀な後継者がいたとしても難しかったのではないか、というやや悲しい諦めと納得にもつながります。
塩野七生氏が愛した3人のイタリアの偉大な男たち、ユリウス・カエサル、フリードリヒ2世、チェザーレ・ボルジア。偉大な変革を志し、その能力を持ち合わせたことでは共通する3人ですが、その最期と変革の行く末は3者3様。しかしながら、フリードリヒ2世が、大変魅力的な偉人であることは、間違いがありません。
神聖ローマ帝国皇帝でありシチリア王国の王でもあった,フリードリッヒ二世の44歳から死,そして彼の息子たちの最後までの物語です。皇帝として,そして王としての地盤をより強固にしながら,法王と激突していく物語は,中世後期の法王と皇帝の衝突の構図と,中世を終わらせルネサンスの幕開けをはじめようとした時代の転換点の記述を絡めながら,一挙に読ませる内容になっていました。
ただ,ユリウス・カエサルやアウグストゥス,悪名高き皇帝たちなどと違って,評価の星は5つにできないなとは思います。これは塩野さんの記述がどうこうという理由ではなく,今回の作品の時代の資料の質や量によるものが大きいと思っています。ローマ人の物語でも,カエサルやタキトゥスの時代は,資料が豊富なこともあり,塩野さんの作品を読んでいてもとても面白いのですが,今回はそこまで,という印象も持ちました。仕方がないのことなのですが,これも塩野さんが上巻の冒頭でかかれたように「中世という時代がどういうものであったか」を示すものなのかもしれません。
読みながら,塩野さんは,ユリウス・カエサル,チェーザレ・ボルジアなど,時代を変革しようとし,転換点に生きた人物を物語るとうまいなとの思いを新たにした作品でした。
ただ,ユリウス・カエサルやアウグストゥス,悪名高き皇帝たちなどと違って,評価の星は5つにできないなとは思います。これは塩野さんの記述がどうこうという理由ではなく,今回の作品の時代の資料の質や量によるものが大きいと思っています。ローマ人の物語でも,カエサルやタキトゥスの時代は,資料が豊富なこともあり,塩野さんの作品を読んでいてもとても面白いのですが,今回はそこまで,という印象も持ちました。仕方がないのことなのですが,これも塩野さんが上巻の冒頭でかかれたように「中世という時代がどういうものであったか」を示すものなのかもしれません。
読みながら,塩野さんは,ユリウス・カエサル,チェーザレ・ボルジアなど,時代を変革しようとし,転換点に生きた人物を物語るとうまいなとの思いを新たにした作品でした。