夏の流れ (講談社文芸文庫) の感想

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参照データ

タイトル夏の流れ (講談社文芸文庫)
発売日販売日未定
製作者丸山 健二
販売元講談社
JANコード9784061983960
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » ま行の著者

購入者の感想

「夏の流れ」は、丸山健二氏のデビュー作である。
 デビュー作とはおもえないデビュー作である。
 本作の梗概は単純である。主人公は、ふたりの男児と、第三児を妊娠している愛妻という家族を扶養するために、死刑囚を収監している刑務所――現実には拘置所のはずだが、丸山健二氏の友人の父親が刑務所で死刑囚を監視していた、という記憶によるらしい――に勤務している刑務官の青年である。ひとりの獰猛なる死刑囚の死刑執行をめぐって、同僚がリタイアしてゆくなか、青年は冷静に《仕事》を完遂してゆく。主題としては、死刑囚の《死》にささえられて《生まれて》くる生命の原罪を、死刑執行という青年の《仕事》をとおして展開してゆく、生死のドラマとも受取れる。丸山健二氏の筆致は残酷なほどに冷徹であり、実際には、死刑制度や原罪意識、必要悪といった主題を超越した視点で、死刑執行人と死刑囚の人生の《夏》が描破される。死刑執行場面の双方の緊張感は圧巻である。
 一社会人であった二十三歳の丸山健二氏は、映画を撮影したかったけれども、資本金がないために、《金のかからない》小説に挑戦しようとおもって、本作を執筆したらしい。事実上人生処女作となる「夏の流れ」は文學界新人賞を受賞し、――有名なエピソードだが――当時史上最年少で芥川賞を受賞した。当時の文壇では、《史上最年少》ということは、《将来有望》ではなく、《前途多難》とおもわれ、評価されなかったうえに、人生最初の小説で芥川賞を受賞したために、当時、単行本を上梓できるほど作品のストックがなく、「雪間」と「その日は船で」を執筆してデビュー作品集が出版されたころには、だれもおぼえていなくて、まったくヒットしなかったという。

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