ピアノの森(20) (モーニングKC) (モーニング KC) の感想

雨宮はカイに自分の気持ちをぶつけます。カイにとってつらいことになりましたが、かえって内に溜め込んだままにしておくよりも気持ちよく感じました。
（三島由紀夫が太宰治に対して、面と向かって「嫌いだ」と言った有名な事件を彷彿し、ニヤニヤしてしまいました）
雨宮はファイナルには進めませんでしたが、雨宮にしか弾けないピアノをみつけ、さらに厳しい結果を受け入れる強さをみせます。カイとの関係に亀裂が生じましたが、思いをぶつけた雨宮自身も傷つきます。それがきっかけとなって、今の雨宮があることに彼自身、気がつきます。二人の関係がどうなるのかについては次の巻で描かれるでしょうが、大丈夫だと思います。

雨宮の父も、心の問題が解決します。父と息子の関係も新たになって、とてもいい感じでした。阿字野の呪縛―いろんなドロドロした感情から解放され、「誰かに勝ちたい気持ち」や「人」でなく「音楽」を意識し、追求していく幸せに気がつきます。人と比べて色んな感情を抱くのは、むしろ人間的です。
様々な芸術家たちの間で繰り返されてきた葛藤で、普遍性を感じます。

重厚でありながら爽やかさがありました。カイのピアノでの活躍はまだ見られませんが、重要な巻です。主要な登場人物の心理面で見所が多かったです。