領土の常識 角川oneテーマ21 の感想

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タイトル領土の常識 角川oneテーマ21
発売日2014-05-29
製作者鍛冶 俊樹
販売元KADOKAWA / 角川学芸出版
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カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

領土の常識 角川oneテーマ21 とは

米軍の配備状況、およびアジア太平洋地域での米軍の動向
米軍の配備状況、およびアジア太平洋地域での米軍の動向

米国の軍隊が世界中に展開するようになったのは第2次世界大戦からである。総兵力の2割以上を常時、海外に展開し有事に備えるのは、超大国アメリカにとっても大変な負担だ。「米軍を世界中から引き揚げ国防費を大幅に削減した方が米国にとっていい」との意見は米国内で年々根強くなっている。〔『防衛白書』平成24年版をもとに改変〕。

ロシア軍の配置と兵力
ロシア軍の配置と兵力

ロシアは大陸国家だが、北極海の氷が解けるとたちまち海洋国家に変身してしまう。大陸国家は陸軍の経費が、海洋国家は海軍の経費がかかるから、大陸国家と海洋国家を兼ねると国防費が巨額になり過ぎて財政が破綻するといわれる。〔上掲『防衛白書』をもとに改変〕。

幕末の北方領土と探検図
幕末の北方領土と探検図

世界で最初に樺太を探検したのは間宮林蔵である。最初に発見した国がその土地を領有するという近代国際法に従って、日本は樺太まで領有権を有していたが、ロシアは既成事実を積み重ねて領有範囲を拡大した。〔『高等学校 最新日本史』国書刊行会、1994年をもとに改変〕。

第1次世界大戦後の日本の版図
第1次世界大戦後の日本の版図

南洋群島はもともとドイツが領有していたが、第1次世界大戦でドイツは敗戦国、日本は戦勝国となった結果、国際連盟は日本に統治を委任した。だが、ハワイと米領フィリピンの海路を遮る形の日本領は日米関係に緊張をもたらした。〔亀井高孝・三上次男・堀米庸三編『増補版 標準世界史地図』吉川弘文館、2012年をもとに改変〕。

インパール進攻作戦要図(1944年3~4月)
インパール進攻作戦要図(1944年3~4月)

第2次世界大戦における日本陸軍のインパール攻略作戦は中途で挫折した結果、多大な犠牲者が出た。日本に協力したインド国民軍にも多数の犠牲が出たが、後にこの戦いは対英独立戦争として賞讃されることとなった。〔服部卓四郎『大東亜戦争全史』原書房、1965年をもとに改変〕。


購入者の感想

本書は、著者の前著『国防の常識』の続編にあたる。

著者は序章で、「軍事は国家に先立つ」として軍事の正しい理解が何よりもまず必要であると前置きする。その上で著者は、「領土と国境の政治学」が地政学であると定義し、今や地政学は「国際情勢認識に不可欠な手段となった」と述べる。こうした認識のもと次章以降では、世界の各地域における領土と国境をめぐる争いの歴史が詳説されている。日本についても第8章を中心に分析がなされている。

多くの事例が取り上げられているが、個人的には日本の長編小説『源氏物語』誕生についての地政学的分析をとりわけ興味深かった。著者によれば、『源氏物語』に戦争の場面が殆ど無い理由は、地政学で説明ができるという。また、インドネシアやトルコが、イスラム教徒が多数を占める国家でありながら、親日的であり世俗的であり続けているのも、地理的歴史的根拠があるという。このように、本書は軍事を中心に据えてはいるものの、文化、宗教、資源、言語といった様々な切り口からも領土問題が議論されており、読者を飽きさせない構成となっている。

本書に関しては記述の正確性や妥当性の点で、異論を唱える人がいるかもしれない。また、本書は現代の世界にも触れ、「今後の国際情勢への展望を示」すと述べておきながら、アフリカ、北極・南極、宇宙などについての言及がないのも、少々残念である。

しかしながら、本書は地政学の要点をきちんと押さえており、日本および世界の歴史を地政学的に考えることのできる、日本では数少ない貴重な一冊といえるだろう。しかも、平易簡潔な文章でとても読みやすい。従って、地政学を学びたい人はもとより、ビジネスマン、学生、主婦なども十分に楽しめる一冊であり、領土問題に多少なりとも興味を持っているすべての日本人に本書の一読をお勧めしたい。

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