ソーシャルデザイン (アイデアインク) の感想

「これが社会を変えた事例だ！」のような書き方は極端だと思います。

例えばゲリラガーデニングの紹介、確かにスラムで花壇に花が咲いていれば、それは人の心を明るくするきっかけにはなりますが、
自然物を扱ったプロジェクトであるということを理解しとかないと、また補足しておかないと誤解を招き、逆におかしくなると思いますよ。

自然物である花の種を植えたら、水をやり、それを永続的に管理していく必要があるわけで、植えっぱなしのガーデニングや、世間で
流行っている植林が、必ずしも良いとは限りません、紹介するなら最後まで関わっていくことの大事さを沿えないと、それは単発のアイデア紹介で
あって、社会問題を解決しているとは言えないと思います。自然物を扱う者である以上、他の作物を駆逐していまったり、単発では問題を
解決したように見えても、中長期でみると、別の問題を引き起こしてしまう場合があるからです。

アイデアの方に意識が向いてしまい、取材した人がどのような問題意識を持っていたのかのヒアリングが十分でないのかも知れませんね、
もしかしたら、紹介されている方も、十分な問題意識があってのことかも知れませんが、それは紙面にはあまり反映されていないので、
単発のアイデアがポコンと出ては「どや、社会を変えただろう！」と、言っているように見え、せっかく良い志を持った登場者の方も世間から
誤解されてしまいます。

冒頭に挙げたように、それ以上の問題を引き起こしかねない危うさを感じさせてしまいます。もうすこしホリスティックに編集されると良いと思われます。

市民運動でも奉仕活動でもない社会貢献の新しい方法「ソーシャルデザイン」を紹介しています。
数ページ読み切りの事例を通してイメージをつかんでもらう、軽めの読み物です。

ソーシャルデザインでは、観察力や創造力を働かせて「社会のあたりまえ」に介入し、問題を解決します。実践にあたって要求されるのは、特別な知識・技能よりもむしろ「子供のような自由な心」です。

集めた事例は、面白く、見事で、微笑ましい。

地域振興、安全運転、途上国支援など取り組む課題はさまざまですが、単なる問題解決で終わらずに人々の社会参加を促進して、連帯感を生み出しているところが素晴らしいです。

事例のほかに、活動家へのインタヴューやこれから始めたい人への助言も折り込まれていて、実践志向。

特にコミュニティ参加や社会貢献に関心のある若い世代におすすめしたい一冊です。