パリでメシを食う。 (幻冬舎文庫) の感想

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参照データ

タイトルパリでメシを食う。 (幻冬舎文庫)
発売日販売日未定
製作者川内 有緒
販売元幻冬舎
JANコード9784344415034
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » エッセー・随筆

購入者の感想

本の題名からグルメ本かと誤解したが、ちがいました。400字詰原稿用紙で488枚にのぼる書下ろしエッセイ(内容はルポルタージュにちかいのだが、文体はエッセイ)。わずか4頁の扉の「はじめに」が秀悦です。この本のエッセンスと、処女作だとは思えない著者のエスプリが躍如かと。すべてを要約して余りある。
 「住み始めてすぐ、この街の日常生活にこまごまと苛立ち始めた。(略)溜まったイライラが頂点に達したあと、ついに全てがどうでもよくなった。すると、不思議なくらい突然にパッと視界が開けて、全く違う景色が見えた。あ、私はパリを誤解していたものかも。」
 「周りのパリジャンたちを見回せば、誰もが気楽に自分のペースで生きていた。(略)そうか、それでいいのか。これがパリの生活なんだ。そう気づいたら、身体から力が抜け、前よりも少し自由になった。それは、几帳面さと常識が幅を利かせる東京からやって来た私には、素晴らしい報せだった。」
 そうして“目覚めた”著者は、毎日街へ出かけ、行く先々で、日本人に会う。そう“パリでメシを喰うために”己の知力・体力のすべてを掛けて働く彼・彼女らに出会い、話を聴く。「私でいいの?」「こんな話でいいの?」「僕の人生なんか、誰の参考にもならないよ」と戸惑う普通の、しかし人生が冒険だと知っている日本人相手に。自己(=これが自分)を、生きる根っこをしっかり持っていなければ、パリ症候群にやられてしまう。
 “「出発」した人だけが、失敗も、挫折も、味わえる(運が良ければ成功も)”=パリで客死した哲学者・森有正の言葉を思い出した。「運命」なんか凡そ似合わない、おシャレで、力強く、生きる希望に溢れた軽い本なのだろう。文庫判なのがもったいない。外国人版の「東京でメシを食う。」を期待したい。

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幻冬舎から発売された川内 有緒のパリでメシを食う。 (幻冬舎文庫)(JAN:9784344415034)の感想と評価
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