The Unconsoled の感想
参照データ
タイトル | The Unconsoled |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | Kazuo Ishiguro |
販売元 | Faber & Faber |
JANコード | 9780571283897 |
カテゴリ | » 洋書 » Special Features » all foreign books |
購入者の感想
複数のコミュニティと関係を持ちながら、どのコミュニティにも属することもできず、互いに分かりあえず、誤解と意図しない行動のみが増幅していくもどかしさ。最後の場面にあるように、行き違った名も知らぬ人との食事や会話を唯一の救いとしてしか見いだせない、ある種の人たち。設定も時代も書き込み様も随分違いはしますが、大量のドタバタを読む進めた後に、『トニオ・クレ―ゲル』のような寂しさと一抹の救いを味わうことができるような気がします。他にもありましたが最初100ページ程度読んだところでは『失敗作?』という感じが付きまといましたが、最後まで読んで損はしないと思いました。
長くて、わけが分からない。高名なピアニストがある街を訪れ、公演の前の数日をその街の正体不明で極めててわがままな人達に振り回されながら過ごす、というお話。相当のイシグロ通じゃないと読み通すことは出来ないんじゃないか、という気がします。でも私はこの作品が一番好き。
彼の作品の主人公はほとんどが、それがどのような職業であれ、自分の仕事については相当に完成度の高いプロフェッショナルなのですが、それでいて内面的にはある矛盾を抱えていて、しかもそれに対してのアプローチがお茶目と言うか幼いと言うかちょっと変な人物、というのばかりです。その一番極端な例がこの作品の中のピアノの先生でしょう。だから面白いんですよね。
抑制の効いた、冷静で知的な語り口が売り物のイシグロさんが、とうとうその箍を外して好きなように書いちゃいました、って感じがして、嬉しかったです。それでいて感じ入ったり、思わず考え込んでしまうような部分もたくさん。イシグロ初心者には向かないかも知れませんが、イシグロ通になりたいなら、しっかりと読破して味わって見るべきです。
彼の作品の主人公はほとんどが、それがどのような職業であれ、自分の仕事については相当に完成度の高いプロフェッショナルなのですが、それでいて内面的にはある矛盾を抱えていて、しかもそれに対してのアプローチがお茶目と言うか幼いと言うかちょっと変な人物、というのばかりです。その一番極端な例がこの作品の中のピアノの先生でしょう。だから面白いんですよね。
抑制の効いた、冷静で知的な語り口が売り物のイシグロさんが、とうとうその箍を外して好きなように書いちゃいました、って感じがして、嬉しかったです。それでいて感じ入ったり、思わず考え込んでしまうような部分もたくさん。イシグロ初心者には向かないかも知れませんが、イシグロ通になりたいなら、しっかりと読破して味わって見るべきです。
ブッカー賞を受賞し、映画化もされた『日の名残り』に続く、
日系イギリス人作家カズオ・イシグロの長編第四作。
デビュー作と二作目では、戦後間もない時期の日本を舞台に、
価値観の転変に適応できずに苦しむ人々の姿を丁寧に描き、
三作目となる『日の名残り』では、一転して舞台を英国に取り、
英国人以上の緻密さで執事の人生を描いてみせたイシグロ。
その彼が次の作品の舞台に選んだのは、
場所はもうひとつはっきりしないが中欧のどこかではあるらしい、
芸術熱の盛んな中小都市であり、
主人公のピアニスト、ライダーはそのキャリアの節目となるような
重要なコンサートを目的にこの街を訪れることになる。
冒頭、ホテルのエレベータに乗る場面で、
ライダーの荷物を手にする初老のボーイ、グスタフが、
自らに課した職業上の倫理を口にし始めるところで、
読者の誰もが思わず微笑みを浮かべずにはいられないのだが、
そんな読者をよそに思わぬ方向へと逸れ始めたストーリーは、
もはや正統的な純文学の枠組みに復帰することはなく、
逸脱に次ぐ逸脱を重ねたかと思うと、
何とも寝覚めの悪い悪夢の連続のような世界を紡ぎ出していく。
あれほどの成功を収めた『日の名残り』の次に、
失敗作と呼ばれることを恐れるどころか、
読者の期待を絶対に裏切ってやろうと言わんばかりの
変化球の極みのようなこの作品を持ってくるあたりに、
イシグロの作家的悪意を感じ、なぜか嬉しくなってしまった。
日系イギリス人作家カズオ・イシグロの長編第四作。
デビュー作と二作目では、戦後間もない時期の日本を舞台に、
価値観の転変に適応できずに苦しむ人々の姿を丁寧に描き、
三作目となる『日の名残り』では、一転して舞台を英国に取り、
英国人以上の緻密さで執事の人生を描いてみせたイシグロ。
その彼が次の作品の舞台に選んだのは、
場所はもうひとつはっきりしないが中欧のどこかではあるらしい、
芸術熱の盛んな中小都市であり、
主人公のピアニスト、ライダーはそのキャリアの節目となるような
重要なコンサートを目的にこの街を訪れることになる。
冒頭、ホテルのエレベータに乗る場面で、
ライダーの荷物を手にする初老のボーイ、グスタフが、
自らに課した職業上の倫理を口にし始めるところで、
読者の誰もが思わず微笑みを浮かべずにはいられないのだが、
そんな読者をよそに思わぬ方向へと逸れ始めたストーリーは、
もはや正統的な純文学の枠組みに復帰することはなく、
逸脱に次ぐ逸脱を重ねたかと思うと、
何とも寝覚めの悪い悪夢の連続のような世界を紡ぎ出していく。
あれほどの成功を収めた『日の名残り』の次に、
失敗作と呼ばれることを恐れるどころか、
読者の期待を絶対に裏切ってやろうと言わんばかりの
変化球の極みのようなこの作品を持ってくるあたりに、
イシグロの作家的悪意を感じ、なぜか嬉しくなってしまった。