森の生活〈上〉ウォールデン (岩波文庫) の感想

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参照データ

タイトル森の生活〈上〉ウォールデン (岩波文庫)
発売日販売日未定
製作者H.D. ソロー
販売元岩波書店
JANコード9784003230718
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 外国のエッセー・随筆 » イギリス・アメリカ

購入者の感想

この「森の生活」の本の中には有名な一節がある。
それはソローがなぜ森で生活をし始めたかの理由を語る部分。

『私が森へ行ったのは、思慮深く生き、人生の本質的事実のみに直面し、人生が教えてくれるものを自分で学び取れるかどうか確かめてみたかったからであり、死ぬときになって、自分が生きてはいなかったことを発見するようなはめには陥りたくなかったからである。人生とはいえないような人生は生きたくなかった。生きるということはそんなにも大切なのだから。また、よほどのことがないかぎり、あきらめるのも嫌だった。私は深く生きて、人生の精髄をことごとく吸いつくし、人生とはいえないものはすべて壊滅させるほどたくましく、スパルタ人のように生き、幅広く、しかも根元まで草を刈り取って、生活を隅まで追い込み、最低の限界にまで切りつめてみたかった。そして、もし人生が厳粛なものであるとしたら、身をもってそれを体験したかった』

ソローは世捨て人ではなく、むしろ誰よりも「生」を積極的に肯定し、それを真実に生きようとした人物であった。そして、そんなソローに言わせると街中で習俗や習慣にはまって惰性的な生活をしている人々は「生きていない人々」であった。

『実在が架空のものとされる一方で、虚偽と妄想が確固たる真理としてもてはやされている。もし人間が実在の世界だけをしっかりと観察し、迷妄に陥らないようにすれば、人生は─われわれが知っているものに例えると─おとぎ話やアラビアンナイトのようになるだろう。必然的なもの、存在する権利のあるものだけを尊重するなら、詩と音楽が通りに鳴り響くだろう。急がず賢明に生きてゆけば、偉大な、価値あるものだけが永遠の絶対的存在であり、卑小な不安や快楽は、実在の影にすぎないことをわれわれは知るだろう。実在するものは常に心楽しく、崇高である。だが、人々は目を閉じて眠りこけ、甘んじて外見に惑わされているために、あらゆるところで型にはまった因習的な日常生活を打ち建て、固定させている。そうした生活は、やはり純然たる幻想を基盤としているのだ。

この著書はアメリカの生活精神の結露として第1級の国民的古典だ。なんでも一から手作りし、自然への熱心な好奇心、探求心による観察はすごい。
森の中のウォールデン湖畔でのほとんどが自給自足の生活。大学を出た男が社会に汚れるのを避け、隠遁する。あるとき町に出ると彼は逮捕される。税金を納めることを拒否していたためであった。それほど自信のある徹底した自足生活。彼のその目的はなんであろう。精神のピューリズムを求めたためであろう。彼の潔癖さは、たとえば新鮮な朝をコーヒーやお茶の香りや味で台無しにしてはならない、と述べているくだりでもわかる。またあまり多くを食べることを戒めている。多く労働することをさえ戒めている。これはあくせく建設に沸き立つ当時のアメリカ国民への批判でもあろうか。切り詰める所は切り詰め、時間を作り、自然の中で遊び、洞察を試みる。それはまさに手作りの洞察である。どこかの学問を当てはめるのではなく、自分自身の目で観察し洞察を(変な言い方だが)築き上げていく。自分の世界を自分の信念で構築していく、このやり方がアメリカを感じさせる。しかし、自然への洞察は自身の観察でするとしても、博大な文学的教養が随所に散りばめられているのは、彼の膨大な読書の証明である。こうしたことが「詩人博学者」と呼ばれる所以だろう。
本書の場合は何度も何度も噛みしめて読み味わうものである。

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