ピルグリム〔3〕 遠くの敵 (ハヤカワ文庫NV) の感想

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参照データ

タイトルピルグリム〔3〕 遠くの敵 (ハヤカワ文庫NV)
発売日販売日未定
製作者テリー・ヘイズ
販売元早川書房
JANコード9784150413132
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 英米文学

購入者の感想

 NYのうらぶれたホテルの一室で若い女の惨殺死体が発見される。浴槽に満たされた硫酸の中でその顔も指紋も判別不能な状態だ。担当刑事のブラッドリーは「私」を現場に呼びだす。犯人は「私」が科学捜査について執筆した書を読んで犯行に及んだらしいのだ。
 この凶悪事件とは別に、アメリカをターゲットにしたおぞましいテロ計画が<サラセン>と呼ばれる男によって進行していた…。

 全3巻で総頁数が1200にも及ぶ大部の小説ですが、臆することはありません。世間には秘密にされているある諜報機関で<ピルグリム>のコードネームで呼ばれる主人公。彼の一人称で語られる壮大なミステリーの真相の全貌を知りたくて、頁を繰る手を止めることなどできませんでした。
 科学捜査の手法を書いた書物を上梓したという<私>の、真相究明に向かってたどる道筋の見事なこと。後段で鏡を利用したとても特異な捜査手法が出てくるのですが、その真実味あふれる究明過程には大いに目を見開かされました。
 また作者は様々なハリウッド映画の脚本に参画してきた人物だけに、アメリカ、アフガニスタン、トルコ、レバノン、イタリア――と舞台を目まぐるしく、かつ大胆に転換していくことで、読者のツボを見事に捉えたエンターテインメント大作を構成してみせるのです。

 そして主人公の人物造形にも目を惹かれます。裏切りや殺人が茶飯事である非情な世界で孤独に生きて来た「私」がブラッドリーという男との間に、静かに信頼関係を醸成していく。その様子は、読んでいて心に爽やかなさざ波が立ちました。

 この血わき肉躍る巨編を日本語で楽しむ上で、山中朝晶氏の見事な翻訳手腕にも言及しないわけにはいきません。バタ臭さが皆無の、読みやすい日本語文があったからこそ、1200頁を踏破することも容易だったといえます。丹念に日本語に移し替えて行った訳者の労に敬意を表したいと思います。

 この物語は今後第2部、第3部と続く端緒に過ぎないのだとか。同じように長大で、なおかつ決して読者を途中で飽きさせることのない骨太の物語がさらにあと2編も読めるのかと思うと今から楽しみです。

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主人公の回想というストーリーテリングが功を奏し、章立ても短く、読みやすいです。

特筆すべきは現代のテクノロジーと人間の推理、洞察、勘、感情などといった人間的な要素が相まって
話しが進み、陰惨な話の中に愛や友情という人間にとって最も深遠なテーマが内包されていることが、
心をわしづかみにする要素だと思います。

今回で一つの話しは終わりますが、ピルグリムを主人公とした話しは3部作らしいので、次回がまちどおしいです。
一気読みの本作!ほんとうにおすすめです。

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