Open の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトルOpen
発売日2009-12-24
製作者Andre Agassi
販売元Vintage
JANコード登録されていません
カテゴリ洋書 » Special Features » By Authors » Literature & Fiction

購入者の感想

アンドレ・アガシは90年代の男子テニス人気を一人で支えた感のある名選手。四大大会制覇の生涯グランドスラム保持者であり、オリンピック金メダリストである。ビッグサーブで楽に点数を稼ぐ男子選手が多かった時代に、アガシはラリーを重ねてポイントを獲る選手だった。加えて、彼はムラのある天才で、メンタルがそんなに強く見えなかった(あくまで私の印象)。悲しそうな、辛そうな顔をよく見せていた。テニスファンは彼を「華麗な天才」と見ていたが、「堅実なチャンピオン」とは思っていなかった。その危なっかしさがまた彼を「愛される天才」にしたのだが、ピート・サンプラスのファンがアガシを嫌うのはそのせいかもしれない。
本作はアメリカでベストセラーになったアガシの自伝、とは言っても「あとがき」で堂々とゴーストライターの名が明かされているので、半ば「伝記」かもしれない。出版に先立って、若禿げで悩んだとか(若い頃の長髪はカツラだった)スランプの頃にドラッグに手を出したとかいう告白ばかりが話題を呼んだが、そんなものは全体のほんの一部である。
これは、幼児期から父によって狂気の訓練を受け、学校教育を放棄させられ、テニスを嫌悪しながらもプロに転向した少年が、「テニスしか出来ない欠損人間」という自己認識に苦しみ、「まともな人間になりたい」と希求し、痛みの中でゆっくりと自己を形成していく古典的な青春物語だ。そして二十代後半に訪れた覚醒を胸に抱き(「望まない場所、望まない職業の中にいるのは自分だけではない。人間はそれが普通なのだ」)、36歳までボロボロの体を引きずって現役を続けた。
読者はアガシと共に苦しみ、アガシと共に成長した気分になり、アガシと共に「聖堂のような女性」(シュテフィ・グラフ)に求愛する。テニスファンの欲目を取り払っても、読み物としてかなり見事な仕上がりなので、失礼だがビックリした。
最近の本国でのインタビューでは、自分にはテニスは向いていなかった、スポーツならばチームスポーツ向き、しかし選択肢があったらならスポーツは選ばなかった、とかとか発言しているので、テニスファンはアングリするものがある。伝説のアスリートがアンチスポーツの本を書いた、とも言える。そんなこんなも含めて人間の複雑さについて考えさせられる奥行きを持った一冊だった。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

Open

アマゾンで購入する
Vintageから発売されたAndre AgassiのOpen(JAN:登録されていません)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.