The Murder Of Roger Ackroyd (BBC Audio Crime) の感想

この朗読を聴きたい動機は、きっとシェパード医師の気持ちを存分に味わってみたいからだという人が多いはず。

うわさ好きな村の人々、それぞれに事情を抱えるファンリー・パークの人々、ミスリードされた警察官たち、
そして黙々とパズルのピースを組み立てるポアロ。
これらの人々が巧みな声色で演じ分けられ、リスナーはまさにシェパード医師となって事件を眺めることでしょう。
朗読で聴いてみると、たとえばキャロラインには実際イライラさせられ、ポアロには知的かつちょっと不気味な印象を抱かされる。
そしてナレーションにおける間のとり方や声調によって、場の雰囲気が感じ取れる。
一言でいえば、感情移入です。
そんな状態で「ポアロの小さな集まり」以降の章を聴き続けるかと思うと、ぞくぞくしませんか？
冒頭に述べた動機は、私の場合バッチリ満足されました。とてもドラマチックです。

購入を考えている人へ：
CD6枚組、全部で7時間弱。各章は長さによって1〜6トラックに分かれています。
BGMや効果音は無く、本文のほかにはタイトルとディスク交換のアナウンスが読まれるのみです。
チャプターリストには章題が入っておらず、しかもところどころトラック情報が間違っていたので少し残念でした（私はハードディスクにリッピングしたので、章題がほしかったわけです）。
テキストについてはCards on the Table: Complete & Unabridgedのレビューでも述べた通り、自分で用意しなければなりません。
しかし日本語版なりとも手元にあれば問題ないと思います。話の筋を覚えてしまった人なら、耳慣れない言い回しを調べるために必要なくらいかと。