Trip の感想

近年のトム．ハレルの創造力の凄さはハンパではない状況にあります。レギュラークインテットだけでなく、今年は去年リリースした"Colors of Dream" バンドで欧米を回ってる上に更にもう一つのユニットを出して来た。このバンドもコード楽器が存在しない。この2~3年の彼の音楽の傾向として、コード楽器を外す、というのが非常に増えて来ている。レギュラークインテットの最新アルバムであるNo.5でもドラムとデュオなんてトラックが複数あったし。
ともあれ、コード楽器が存在しない、というのはコード感が希薄になることを意味しないんです。むしろそれぞれの楽器の倍音でもの凄く豊かに響くこともしばしばあるんです。それはこのアルバムでも十分感じられます。負傷によるハンディから蘇ったマーク．ターナー、ターナーの盟友でもあり、トムのアルバムではThe Art of Rhythm以来の録音になるドラムのアダム．クルーズ、といういつもと少し違う顔ぶれですが、演奏内容はいつもどおり素晴らしいものです。聴きものはやはり去年コミッションされて書かれた６曲の組曲かと。ライナーノーツを同じくトランぺッターのデイヴ．ダグラスが書いています。このアルバムは日本盤も同時発売されてこれの翻訳されたものがあるので、それを読むと、トム．ハレル、という音楽家の存在がいかにジャズシーンで大きなものかがお分かり頂けると思います。是非聴いて頂きたいです。