「流域地図」の作り方: 川から地球を考える (ちくまプリマー新書) の感想

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参照データ

タイトル「流域地図」の作り方: 川から地球を考える (ちくまプリマー新書)
発売日販売日未定
製作者岸 由二
販売元筑摩書房
JANコード9784480689078
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 地球科学・エコロジー » 地球科学

購入者の感想

久米宏さんのラジオに
本書の著者である
岸由二(きし・ゆうじ)氏(1947-)が
ゲストとして登場しましたので
おっとり刀でレヴューを記すことにしました。
本書を拝読したのは2013年です。
当時、私は英国の生物学者
リチャード・ドーキンス氏(1941-)の
『利己的な遺伝子』(紀伊国屋書店 1992)
『遺伝子の川』(草思社 1995)
などを読んでいました。
前者を邦訳したのが動物行動学者
日高敏隆(1930-2009)をはじめとし
岸氏を含む4名の方々でした。

岸氏のご専門は進化生態学ですから
『利己的な遺伝子』を翻訳するのは
そのカテゴリーに含まれます。しかし
なぜ「流域」地図の本を書かれたのか?
興味がわきましたので本書を購入しました。

結論から申し上げますと
岸氏は横浜市鶴見区つまり
一級河川「鶴見川」の「流域」で育った
から‥が第一の理由です。
第二の理由は
生物の「生命圏」「生態系」あるいは
防災を行政単位ではなくて
河川の「流域」単位で考える方が
本質的でありかつ有効であるから
‥です。

サハラ砂漠のような砂漠と
グリーンランドのような氷河地を
別にすれば地球上の土地は
「流域」によって分類することができます。
境界線が「尾根」です。
あるいは「分水嶺」と呼んでもいいでしょう。
地上に降った雨は低い方へ流れます。
「流域」という概念は物理学的にも
生物学的にも気象学的にも
自然な概念であることが分かります。

岸氏によりますと
世界の先進諸国の中で「流域」の概念を
学校で教えていないのは日本だけの由です。
省庁や学会のセクショナリズム(?)が
関係しているらしいのですが
「官僚制」の象徴のような話です。
いったいどこが「グローバル化」で

あちこちで綻びが目立ち、曲がり角に来ている今の産業文明に疑問を持ち、自然と共存した新しい暮らし方を考えている人にとって、本書は最適な入門書の一つであると思います。
本書は、温暖化が進み、台風の大型化、海面上昇によるゼロメートル地帯の拡大、高潮の危険増大などの水災害のリスクがますます高まると懸念されるこれからの時代、従来の「行政地図」ではなく、「流域地図」で自分達の暮らす大地を見つめなおそうと提起しています。
「流域」とは、降雨が大地の凸凹に沿って集まり、流れ下り、一つの川に集まる範囲のこと。
普段私達が慣れ親しんだ地図は、道路や鉄道などの交通網や、公共施設やお店などが書かれていても、高低差は書かれていません。
しかし、大雨による洪水や高潮、あるいは津波などの災害においては、この大地の凸凹が決定的に需要になります。
例えば、大雨により川が氾濫するのは下流域が多いですが、その水は下流の街に降った雨が原因ではなく、その川の流域、特に上流域に降った雨が原因です。
例えば、2011年9月に100万人を越える住民に避難勧告が出された庄内川、避難勧告の大半は名古屋市を中心とする愛知県内に出されましたが、流域の上半分は岐阜県に位置しています。
ですから、名古屋市民は自分達の街に降った雨だけではなく、上流の岐阜県に降った雨を警戒しなければならないのですが、テレビなどのニュースでは増水した名古屋市内の川の様子を映すのが常で、上流の様子が映されることはほとんどありません。
本書では、洪水は行政区を超えて流域で起こることを示しながら、流域地図に基づいた災害に強い街づくりの事例も紹介しています。
また水の循環が生態系に与える影響ついても触れ、生物多様性の保全回復も流域地図をベースに行うことを勧めています。

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