「先送り」は生物学的に正しい 究極の生き残る技術 (講談社+α新書) の感想

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タイトル「先送り」は生物学的に正しい 究極の生き残る技術 (講談社+α新書)
発売日販売日未定
製作者宮竹 貴久
販売元講談社
JANコード9784062728393
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 生物・バイオテクノロジー » 生物学

購入者の感想

まず、昆虫の生態などの研究としては、大変面白く、「なるほどなるほど」と、感心しながら読めることは確か。ただ、それを人間、得にサラリーマンや社会人の行動原理に当てはめるのは、当てはまるところが、昆虫だろうが人間だろうが、同じ生物として共通するところが多いであろうことは、十分想定されるが、それは、また別の人間心理の学者がすべきもので、著者が安易に決めつけすぎるのはどうかと思う。死んだふりする昆虫の生態の解明に何年もかかったのなら、人間にも同様の傾向があるかを研究するには、もっと時間がかかるとおもうなあ。いや、「だいたいその通りかな?」と、感覚で理解できる例は多々あるが、感覚と研究は違うのでは。そして、それぞれの習性例が、メリットとデメリットを含んでいるのなら、人間が真似してもデメリットとメリットがあるから、単純に法則化はできないよ。ニートにも親を利用する生存戦略はあるが、いずれ親が死ぬということを先送りにしていたら、生き残れないじゃないかとか。親に莫大な遺産がある場合は別だが。

ただし、「生き延び、未来をつなぐためには体裁やモラルなど言ってる場合ではない、純生物的には」っていうのは、賛成。

面白い本である。わかりやすく面白く読ませるための工夫が進化生物学の知見を人間社会を生き抜く知恵に読み替えることであった。この本の帯に「頑張るだけでは報われません」とある。生き物が進化の結果獲得した捕食者に対する戦略、つまり食べられないようにするための戦略に「先送り」や「死んだふり」「擬態」「寄生」といった知恵がある。そこから現代社会を生き抜く知恵を学ぼうというスタンスである。
この手の本の書き手としては竹内久美子という先達がいて、α新書にも『指からわかる男の能力と病』を書いている。けれども、よく進化生物学の研究材料になっている虫と、人間つまりヒトには大きな違いがあることを無視しないと、そんな比較は出来ないのである。それは、虫の行動は生まれつき決まっている遺伝的な形質なのだが、ヒトの行動は学習によって形成される後天的なもの、つまり文化的なものだということである。性でいえば、ヒトではセックスよりもジェンダーが大事だということだ。虫にはジェンダーはない。したがって、虫から得られた教訓というものはすべて眉唾である。竹内の本や本書の教訓は悪い冗談である。そう言っては著者の工夫に対して身もふたもないかもしれない。眉唾見解を除けば、いや除くのは無理だからジョークだと思って笑い飛ばせば、この本はたいへん面白く書かれている。生態学の研究成果を基盤にして、なんとか知恵を使って生き抜こうとする喜劇の主人公を高く評価した、ミーカーの名著『喜劇としての人間』(TBS出版部)を連想した。

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