一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫) の感想
参照データ
タイトル | 一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | ジョージ・オーウェル |
販売元 | 早川書房 |
JANコード | 9784151200533 |
カテゴリ | ジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 英米文学 |
購入者の感想
これだけレビュー数が多くて5.0に近いということからも、いかにこの作品が興味深いか分かります。
SFといっても奇想天外な科学技術はほとんど出てこず、むしろ退廃的で、実際に書かれた1948年(アナグラム)から夢想しても尚、文明進化が見られません。 しかし物語を読み進めるにつれ、その理由が判明する・・・。
個人的にこの物語で最も心を奪われたのは、舞台背景と核心を突く、作中に登場する或る書物の記述。どうしてこういう社会なのか、を論理的に語っています。その設定の見事さと同時に、これは実社会に照らしても真実なのでは・・・という疑念が湧き上がってくるのです。
「権力を持って富裕を得ることが目標ではない、権力そのものが目的である」「無思考こそ階層社会の基盤」といった概念だけでなく、科学的物質論ですら「無いと思えば無い」という一見暴論だが説得力ある解説でぐうの音も出ず、遂には「本当に戦争をしているかどうかは問題ではない」・・・・
実社会に照らして、実はどれもあてはまるのではないか、と思わせる迫力と論理構成。確かに今の日本は民主主義ですが、これだけ政治に無関心無気力な国民が大多数なこと、世界はWebを介して情報がリアルに届くはずなのに物理的距離感は埋まらず、隣国の戦争も実態が分からない、格差社会が広がり本当の富裕層こそが国を動かしているのではないか・・・とさえ想像し始めると、もう全てを疑いたくなります。
しかし逆に、主人公の肉体が体感する快楽と辛苦だけはリアルなものとして表現され、虚構の中の唯一の真実であると同時に、それに対抗し得る唯一の力だとも暗に示されています。だからこそプロール(下層)こそ希望だと見出すのですが・・・・・・・・・
私は政治学に疎いですが、60年以上も前に社会の真理深層を鋭くえぐり、巧みに表現した本作、必読の価値ありです。
SFといっても奇想天外な科学技術はほとんど出てこず、むしろ退廃的で、実際に書かれた1948年(アナグラム)から夢想しても尚、文明進化が見られません。 しかし物語を読み進めるにつれ、その理由が判明する・・・。
個人的にこの物語で最も心を奪われたのは、舞台背景と核心を突く、作中に登場する或る書物の記述。どうしてこういう社会なのか、を論理的に語っています。その設定の見事さと同時に、これは実社会に照らしても真実なのでは・・・という疑念が湧き上がってくるのです。
「権力を持って富裕を得ることが目標ではない、権力そのものが目的である」「無思考こそ階層社会の基盤」といった概念だけでなく、科学的物質論ですら「無いと思えば無い」という一見暴論だが説得力ある解説でぐうの音も出ず、遂には「本当に戦争をしているかどうかは問題ではない」・・・・
実社会に照らして、実はどれもあてはまるのではないか、と思わせる迫力と論理構成。確かに今の日本は民主主義ですが、これだけ政治に無関心無気力な国民が大多数なこと、世界はWebを介して情報がリアルに届くはずなのに物理的距離感は埋まらず、隣国の戦争も実態が分からない、格差社会が広がり本当の富裕層こそが国を動かしているのではないか・・・とさえ想像し始めると、もう全てを疑いたくなります。
しかし逆に、主人公の肉体が体感する快楽と辛苦だけはリアルなものとして表現され、虚構の中の唯一の真実であると同時に、それに対抗し得る唯一の力だとも暗に示されています。だからこそプロール(下層)こそ希望だと見出すのですが・・・・・・・・・
私は政治学に疎いですが、60年以上も前に社会の真理深層を鋭くえぐり、巧みに表現した本作、必読の価値ありです。