洪自誠『菜根譚』 2014年11月 (100分 de 名著) の感想

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参照データ

タイトル洪自誠『菜根譚』 2014年11月 (100分 de 名著)
発売日2014-10-25
販売元NHK出版
JANコード9784142230440
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 倫理学・道徳 » 人生論・教訓

購入者の感想

『菜根譚』は「儒教」・「仏教」・「道教」の三大思想の良い所を、抜粋したような書物である。著者の洪自誠についてはよくわかっていない。そこが、有名な思想家の著作との違いである。
原文を読むなら、最適なのは岩波文庫であろう。白文・書き下し文・口語訳に、注が丁寧に付けられている。
しかし、口語訳を通読するだけでも結構難しいので、100分de名著のテキストが入門にはちょうどいい。
「『菜根譚』に学ぶ〜」のような読みやすい本が多く出版されているが、簡単に言い換えたものは、原典から逸脱しすぎている。
『マンガ菜根譚・世説新語の思想』、『図解雑学菜根譚』あたりがおすすめだ。

 よく政治家の事務所に麗々しく飾ってある書「一点素心」が「菜根譚」から来ているとは
知りませんでした。というか、この本を読むまで、「菜根譚」については全く知識ゼロ。
高校の漢文の授業でも習わなかったように記憶します。もう随分と昔の話ですが。

 著者の洪自誠は明(みん)末の人。大河ドラマ「軍師官兵衛」で、豊臣秀吉が国内統一を
果たして、「次は明に攻め込むぞ」と息巻いていましたから、そのころに書いたと思われます。
実際、洪自誠の先生の一人、了凡道人は秀吉の朝鮮の役の時、明から派遣されて
平壌の守備で手柄があったと伝えられています。だから今からおよそ400年くらい前に
書かれた本です。

 「菜根譚」は処世訓だと聞いて、最初は処世術の本、つまりや世の中をうまくたちまわって
出世したり、お金を儲けていい家に住んだり、良い伴侶を見つけて幸せな家庭を築いたりする
ためのハウツー本のようなものかと思いましたが、まったく違いました。処世訓の
ひとつひとつがなんだかとてもズッシリと重いのです。例えば、前巻の33、

  功名富貴の心を放ち得(え)下して、便(すなわ)ち凡を脱すべし。

 (功名を立て、富貴を願うのは人情であるが、その心を忘れてしまえば、
  初めて凡俗の域を脱することができる。つまり功名富貴に捉われていては、
  それ以上に尊いものが人生にあることを見失ってしまう。)

とてもきびしい教えです。

 全部で357条の処世訓があります。著者は儒教、仏教、道教の三つの教えのエキスパート
ですから、内容はそれぞれがもっともだとうなずけるものばかり、まさに先人の知恵が
凝縮された珠玉の言葉です。でも「言うは易く行うは難し」。
とても実践するのは難しいものばかりです。仮に(数が365に近いから)日めくりカレンダーに
入れて、毎日一条ずつ読んでいると、(漢文の勉強にはいいかもしれませんが)
随分と重苦しい憂鬱な一年になると思います。

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