西行全歌集 (岩波文庫) の感想

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参照データ

タイトル西行全歌集 (岩波文庫)
発売日販売日未定
製作者西行
販売元岩波書店
JANコード9784003002322
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 詩歌 » 和歌・俳諧

購入者の感想

おおむねありがたい1冊。
書名通り、「山家集」「聞書集」「残集」などの西行の歌2000余首のみならず、
西行自選の歌合「御裳濯河歌合」「宮河歌合」まで載せている。

とくに、2つの歌合が文庫で読めるのは、まことに貴重。なにしろ、
「御裳濯河歌合」は俊成、「宮河歌合」は定家による加判と判詞が附いている。
西行が自ら選び合わせた、36番ずつ2組(72首×2セット)の歌合を、
当時最高の歌人父子の判定評価とともに、脚注つきで、手軽に味わえる。

本書の校注者・久保田淳は、同版元から30年前に出た「古典を読む」シリーズの
『山家集』でこう書いていた――「定家の歌は阿片の魔力でもって酔わせてくれる
(中略)それに対し、西行の歌は反対に目を覚まさせる、覚醒させる、
迷妄の境からひきずり出そうと心に作用する」と。

かつて、自分はこの考えに不満だった。むしろ、定家こそ1000年の
歳月を超えて、我々の詩心を覚醒させてくれるのでは、と思ったから。
一方、西行の歌は垢にまみれた、抹香くさい坊さんの呟きのように思えたから。

本書の解説で久保田は、西行歌が多くの人に愛唱されたことを認めた上で、
「享受者それぞれの思い描く西行像が先入主として存在するために、
その和歌表現の多様性や伝統性、同時代歌人との共通性などに余り
注意が払われてこなかったのではないか」(p476)――と言う。

それゆえ、本書は西行の「心の世界のあるがままを知り、そのことを通じて、日本の
ことばの豊かな広がりを味わうことを願って」編まれたのだ、とも宣言している。
長く版を重ねた佐々木信綱校訂の岩波文庫『新訂 山家集』は、底本の問題以上に、昔の
活版そのままなので、版面がもはや読みづらかった。その点、本書は確かに読みやすい。

著名作家による潤色や、饒舌な宗教者の方便などから解放されて、虚心に西行を読む。
最低限の注だけで西行を読みなおす。それには、本書は確かにふさわしい。

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