ソロモンの偽証: 第III部 法廷 下巻 (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトルソロモンの偽証: 第III部 法廷 下巻 (新潮文庫)
発売日2014-10-28
製作者宮部 みゆき
販売元新潮社
JANコード9784101369402
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

購入者の感想

これはミステリーだったのだろうか?
前半の謎の埋め込みと、後半の事実の解明という
点ではその通りだろうが、結局読了してみて
何かドキドキの展開というより、おのおのの
登場人物への感情移入や、中学生との設定
故の未熟さに、昔を思い出しながらいつの間にか
終わっていた感じだ。

法廷編に入るまでもなく、弁護人神原の裏は、
最終的には予想通りだったし、裁判で明らかに
なった事は、おおよそその通りの方向で進んだので
ミステリー的な後半に進むにつれての緊張感
は少なかった。これは著者もわかって書いていたような
気がする。また裁判中の検事藤野涼子にしても裁判前半の
弁護人にいきり立つ点も、話の流れで言えば
ちょっと強引で不自然な感じもした。

という、読後の感想にもかかわらず、はっきりいって
一気に読みきった。それは、やはり、ミステリーという
点ではなく、本作品の中で人間関係が複雑に絡み
合いながら、その登場人物の知らない面が、各個人に
否応にもかかわっていき、お互いに成長していったり
反発したりという人間模様がミステリーに多く肉付けされて
いる点が大きい。

そして旧来のシステム(本作では、学校と教育委員会)による、
事なかれ主義にながされずに、進んでいこうとする生徒達
の姿に、大人になった自分からみて新鮮さを感じたせいかもしれない。

人はそれぞれ、欠点も長所もあるんだよ、だから
ひとつの側面を見て判断はよくないかもね、と
問いかけられているようで、反省にもなった。

合計文庫6冊である。大作であることには間違いないだろうが
それ以上に、ミステリーでもなく、事実に基づいたドキュメンタリー
でもなく、ましてヒューマンドラマでもない。しかし
読むものをひきつける、そんな不思議な本でした。

完敗でなく乾杯。
やはり裁判大詰めは本が離せず、時間を忘れて没頭した。

全体を通しては、自分もこんなにまっすぐなときがあったかなと
懐かしく思わずにはいられない。
でもこんなに賢くはなかった。
なんとなく読み進むうちに最後の大筋の展開は読めたけど、
でも中学生の子ども達の一言ひとことがおばさんの胸には染みました。
こういう何気ないピュアな思いを表現出来るのがこの作者の才能で、
だからわたしはこの作者の作品が大好きです。

中学3年の暑い夏、短い期間だけど熱い思いで日々成長し続けた彼らを
眩しい思いで見つめ、羨ましい気持ちさえ持ちました。

時代背景も少し昔で、懐かしいかんじもして、
自分の中学時代や苦い思い出なども
ちょっと思い出したりしてしまいました。

文庫本の特典で、最後にこれまた大好きな杉村三郎氏が出てきたのも
ファンにはたまらなかった!
大人になった彼らのその後も、親目線でほのぼのした気持ちになりました。

凄い物語だけど長い。いや、長いけど凄い物語だ。宮部みゆきさんの作品は「火車」「レベル7」「名もなき毒」模倣犯」しか読んでいないので、
この「ソロモンの偽証」が、著者の最高傑作かどうかは、判断できかねる。ただ、多彩な人物の一人ひとりをきちんと描写し役割を与える技と、謎解きミステリーに留まることなく普遍性をもった物語の力を、いかんなく発揮した第一級の作品と評価した。
中学生の登場人物たちが、同級生の誰に似ているか、思いながら読んだ。私はスーパー7人組には入っていないな、陪審員にも入れないな、たぶん傍聴席から眺めているんだろうな。この物語を読んで、52歳にもなろうとしているのに、恥ずかしながら、結果は大事だけれど、経過はもっと大切なことだと、改めてかみしめた。

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