放射能と人体 (ブルーバックス) の感想

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参照データ

タイトル放射能と人体 (ブルーバックス)
発売日販売日未定
製作者落合 栄一郎
販売元講談社
JANコード9784062578592
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » エネルギー » 原子力・放射線

購入者の感想

著者は生物無機化学を専門とする研究者。
放射線が人体に与える影響を原子・分子・細胞のレベルで詳細に解き明かした類を見ない深い解説書である。
第1章の「放射線の威力」を説明する野球のボールのエネルギーにたとえた挿絵が、まず秀逸である。
第2章では、放射線が原子や分子レベルで改変を及ぼすという点と、フリーラジカルなどの化学的影響を生じることも説明する。
第3章は「生物は化学世界に生きている」と題して、セシウムが人体に取り込まれたら、長期間体内に留まることを図示している(単なる物理作用であると短期間の照射のみで終わる。ヒロシマやナガサキのデータ処理はそのような扱いをしているので、現実を直視していない)。
以下、第12章まで、強い説得力を持って放射能と人体が両立できないことを説いている。
被ばく影響が甲状腺だけではなくて、多臓器に働いて不全を起こすこと、がん発症は時間がかかるが、それ以前に他臓器にさまざまな生理機能を及ぼすことを理路整然と説明している(p.146など)。
原発は正常運転していても、年間9x10の14乗Bqまで放出を許容されていて、原発周辺の死亡率が高いことを既存の調査結果で説明している(第8章)。福島県の健康調査で、事故直後から甲状腺がんが増えていることを調査委員たちが「スクリーニング効果だ」「過剰診断だ」といっているが、それは平時から地元の人たちに甲状腺がんが多かったことが露見したということを示しているにすぎないのではないか。
現在、20mSv/yまでの被ばくを許容するとして避難者の帰還を急いでいるが、チェルノブイリ同様、何世代も病弱な人びとを人為的に発生させる悪政である。

政治や産業界の影響を受けやす分野が、放射線の世界です。
過大に危険視されたり、反対に、安全側に傾いたり、どちらの言い分が正しいのか良くわからないところです。
こういう時こそ、科学的に調べるのが一番だと思うのですが、それができない状況があります。(認められないこともたくさんあるのですが)
放射線で、一番懸念されることは、内部被曝であり、(電離)放射線が細胞の分子構造を破壊したり、DNAの核酸を破壊する可能性がある事を書いています。
それが決定的なことで、放射線がどのように、また、それくらいの量で、人体に破壊するのか分からない。とも率直に書いています。
この点、好評が持てます。
最後に、各地の放射線被害についてかかれていますが、イラクとコソボで使用された劣化ウランで、子供や若者の死亡率が高く白血病が多くなっている事実は注目すべきところです。
かなり専門的なことを書いてあるので、高校の物理、化学の知識、大学初等の生物くらいの知識が必要です。

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