炎のAndroid開発道場 の感想

要はこの一冊でどうなるものでもない書籍。

ドノービスのプログラマーでは無理でしょう。

事例は或る程度使える。

まずもって言えるのは、この本は読み手を選ぶということ。著者は『よちよちAndroidサンデープログラミングの会 初心者教育委員会』とあるが、「いろはの"い"」から始めるための入門書がお望みなら、他の本から読み始めた方がいいだろう。この本が役に立つのは、その1冊目を読み終えてからだ。なぜそういうかといえば、企画者自身がそうした意図でこの本を構成しているからだ。この本の内容を企画･制作した人たち自身が、サンデープログラマの集団であり、この本の内容は彼らが己が来し方を振り返り、こんな本が必要だと思って創った本なのだ。

教示してくれる内容も進め方もユニークだ。たいていは「GPSを活用してみましょう」などと機能ドリブンで話が進められるが、この本の著者はそうしたスタイルに異を唱えている。300人を超えるコミュニティメンバーにアンケートを採り、実際のサンデープログラマが実体験に基づいて行き当たった問題を56件抽出し、それにシニアな職業プログラマが実践的な解決法を提示するというスタイルを採用している（それも親しみやすくコミカルに）。その内容も、情報の集め方やライセンスに関することから、多様な端末への対応法、操作性やパフォーマンスへの配慮、多人数での開発など、膝を打つような話題が目に付く。実践的な知識と知恵を教示した後には演習が5種類用意されている。その内容も、フォトメモ、パノラマビューワや散歩計（万歩計に歩いたコースの地図表示や履歴管理機能が付いたもの）など、「こんなもの作れるの？作ってみようか…」と素人心をくすぐってくれる。これらの演習をクリアすれば、上述の困ったこと、悩んだことに行き当たり、その解決方法を試せるように工夫したということだ。

「独力でアプリ開発をし通せる力が身につく」というこの本のゴールにAndroidサンデープログラマ予備軍の自分が到達できるかと問われれば、正直まだわからない。それでも、著者の思いと狙いを知り、実際に本書を手に取ってみたら、ワクワクする気持ちがわき、挑戦してみたくなった。そんな気持ちにしてくれたことを評価したい。
拙文がこの本を求める読み手とこの本の出会いの一助になれば幸いである。