形態デザイン講義 の感想

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参照データ

タイトル形態デザイン講義
発売日販売日未定
製作者内藤 廣
販売元王国社
JANコード9784860730550
カテゴリ » ジャンル別 » アート・建築・デザイン » インテリアデザイン

購入者の感想

スター建築家・内藤廣の東大での講義録第三弾にして完結編。構造とデザイン、環境とデザインについて論じてきた筆者が、最後の難関、形態・意匠とデザインを語る。

まずはこれまでの復習から。デザインとは、技術の翻訳であり、場所の翻訳であり、時間の翻訳であるという内藤の考えを丁寧に論じつつ、思索はさらに深みを増している。曰く、建築とは、デザインとは、「待つ」ことであると。50年、100年の生命を持つ建築は、未来から我々を待っている存在であると。我々のいなくなった100年後にも存在し続けるものとして、建物をイメージするということ。それが、現在の、短期間でスクラップ・アンドビルドされている建物に、都市に、欠けているものではないか。

続けて、内藤は、自らの実作である島根県芸術文化センター、日向駅をもとに、これまでに述べられた抽象的な思考がどのように具体化され、これらの建築にたどり着いたのか、その思考の過程を明らかにする。

その中で語られる内藤の文明観、例えば島根県という場所について、日本が今後、経済的に縮小していく中で、日本海側の自然と調和した街や風土というのは、大きな変化がなく、日本の一番いいものが残っていく可能性がある、との指摘は、経済発展とともに日本の美しい自然との共生を破壊し尽くしてきた我々にとって誠に厳しいが、希望をも抱かせてくれるものだ。日本の近代とは、完成度の極めて高かった近世以前の文化を蕩尽してきたものだった、との指摘もその通りであろう。我が国が外国人旅行者に誇れるものといえば、全て江戸時代以前の建物であり、街並みであり、文化なのだから。我々の近代は、誇るべき何物をも生み出していないのだ。

だが、およそ150年間の混迷を経て、我々がこのような認識と、かくも素晴らしい建築家を持つに至ったことは日本社会の進歩だと思う。内藤の本三部作を読んだ若い建築家、都市計画家らが、日本の美しい自然と調和した美しい建物や街を生み出してくれることを心から望みたい。そして、東日本大震災を経、また、経済的には縮小に向かう我が国は、微かではあるが、その方向に進みつつあると信じたい。
(2014/3/18読了)

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