遍歴 (神谷美恵子コレクション) の感想

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参照データ

タイトル遍歴 (神谷美恵子コレクション)
発売日販売日未定
製作者神谷 美恵子
販売元みすず書房
JANコード9784622081845
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 著者別 » か行の著者

購入者の感想

著者の自伝。他の作品とは違った魅力がある。大変興味深いと思うことが多く、
また何気ない小さなエピソードが意外で、印象的だった。
彼女の書いたものを読んでわたしが不思議に思っていたのは、どうしてこの人は
「日本」を意識しないのだろうということだった。その視線は「人間」だけを見つめていて、
○○人とか○○文化というものとは縁がないようだ。その理由について彼女自身は、
子供の頃にスイスのユニークな国際学校でたくさんの国の子供たちと一緒に
勉強したからだろうと言っている。
若い頃の彼女の人生にはそれぞれの節目に大切な先生との出会いがあった。
それぞれの先生がそのときの神谷美恵子の人間性を見抜いて、別れるときに
心をこめてしたためた手紙を渡すのが印象的。そして引越しや戦争があったにもかかわらず
彼女はそれらの手紙をずっと大切に持っているのだ。それぞれが、たましいとたましいの
出会いのようだ。
最後に、自己顕示欲がなく目立つのが嫌な性格の人にとって、自伝というものは
書きにくいものなのだろう。この本を書きながら自己嫌悪に陥っていたと
夫があとがきに書いてあるが、それが察せられるような文章だった。
絶筆となった本書の最後の言葉:
「それにしても生きるとは何と重いことであろう。私は今らいの患者さんに一番親近感をおぼえている。
彼らのところへ十五年ちかく通えたのは一生のよろこびであった。何もなしえなかったが、
彼らの心の友とさせていただいたことが光栄である。社会の底辺の人こそ
最も大切にすべき人たちだ、との思いを深めている。一生、ちどり歩きのような遍歴だったが、
彼らにめぐりあえて、交わりをつづけられたことを最大の恩恵と考えている。」(p309)

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みすず書房から発売された神谷 美恵子の遍歴 (神谷美恵子コレクション)(JAN:9784622081845)の感想と評価
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