大人のいない国 (文春文庫) の感想

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タイトル大人のいない国 (文春文庫)
発売日2013-08-06
製作者鷲田 清一
販売元文藝春秋
JANコード9784167838546
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

購入者の感想

 お二人の対談が2編と、それぞれの短文が計6編。後書きを含め186頁しかないが、人が「成熟」するとはどういうことか、という難しいテーマを巡る対話と思索がうまく並んでいて、飽きさせず、短時間で通読できた。むろん、プロの哲学者・思想家お二人の話なので、シロウトにはすぐには呑み込めない晦渋な言い回しも頻出する。それでも、目に見えない「流れ」がうかがえ、読み取りにくい箇所は部分的に飛ばしても大勢に影響はなかったように思う。なお、評者は十分過ぎるほどの「成熟した大人」なので、本書は自己再確認のような雰囲気で読み終えた(笑い)。

 本筋以外でも、面白い話は多い。例えば、中国の『韓非子』に出てくる有名な「矛盾」の寓話(最強の矛で最強の盾を突いたらどうなるか、というアレ)。学校では「そう問われた矛と盾を売る男は答えに詰まり、立ち往生した」と教わったが、この話を持ち出す内田先生は「むしろ(矛盾をつかれ)男はニヤリと笑って、逆にこう訊ねたのではないか。『どうなると思う?』」云々――。さらに「矛と盾を並べて売ることではじめて『無敵の武器=最終兵器』の出現は回避されている」(118頁)と続ける。この短文のタイトルが「もっと矛盾と無秩序を」――。本筋以外というより、もしかすると本筋そのものかもしれない。

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