日本の奈落 (TRI REPORT CY2015) の感想

煽情的ですぐにウソがばれていなくなる経済評論家が多い中、日本の経済政策と景気動向、株式市場動向を米、中国、EUなどの経済金融状況と照らして精緻に分析、予測しておられる。安倍政権の進行形の経済金融政策と結果を冷厳に見極める。経済IQが高められる著書でした。

植草さんは今でも国内屈指のエコノミストと思います。
真実を克明に我々に提示してくれる数少ない経済学者でしょう。
やはりアベノミクスの評価に関しては、消費税の増税問題が非常に大きなウエートを示していますね。
単に批判するだけでなく、消費税の増税を延期する施策を提言していることは、他のアベノミクス批判書とはちょっと違いますね。
それとアメリカのFRB議長であるイエレン氏のQR３解除後の金融政策の今後の問題等は、本当必読に値します。
本書は、既に日本の借金がGDPの2倍以上に膨れ上がり消費税の増税待ったなしとの増税派、景気の動向に対しする慎重派と一線を画した
提言をしている貴重な日本政治経済への提言書になってます。
もっと植草さんが政治経済の表舞台に戻って、発言できる機会がくることを私は望みます。

植草一秀氏は、自ら月2回発行している「金利・為替・株価」というレポートの年次版を、昨年から著作として出版し始めた。
本作は、昨年４月の『金利・為替・株価　大躍動』、１２月の『日本経済撃墜』（いずれもビジネス社）に続く3冊目である。

いつもながら、表面に現れた経済統計だけでなく、その背後にあるものを見抜き、
冷静に分析していく植草氏の洞察力は冴えている。
今年１２月に来年１０月の消費税再増税を行うかどうかが決断されるため、本書では、
消費税問題に関する記述が多くなっている。
植草氏によれば、(a)予定通り再増税決定→来年年央衆議院解散、
(ｂ)再増税先送り→来年年央衆議院解散、
(ｃ)今年中に衆議院をサプライズ解散→予定通り再増税の３つのシナリオが考えられ、
(a)と(b)が４５％、(c)が１０％の確率ではないか、と言う（評者注：本書出版後の１０月３１日、
日銀による量的緩和が決定された。これにより、本書出版時より(a)の可能性が高まったと思われる）。
植草氏は(b)を最も適正な政策だという。(a)(c)では、日本経済が壊滅するという警告を発している。

評者は個人的には、イエレン米FRB議長の金融政策が詳しく解説されている点が秀逸だと思った。
結論だけ言えば、イエレン氏は金融政策のかじ取りを非常に上手く行っており、
現在のアメリカの高い株価は決してバブルではない、ということだ。
また２０１４年の日本及び世界の金融経済の歩みが、コンパクトにまとめられている点もよい。

ビジネスパーソン、投資家にとっては、今後の日本経済を考える上で非常に有益な１冊と言える。

植草さんのアベノミクスに関する分析は今迄のところ全て的中しており、最も信頼性があります。1990年夏から13年半継続された『金利･為替･株価週報』が、2004年11月より新たに会員制レポートとして『金利･為替･株価特報』（月二回発行）に成りました。そして、過去にも一年分を収録した『UEKUSA REPORT』＝『年次報告書』が市井文学から出版されています。本書はその年報版第三作です。このように、政治経済批判の書と、株式市場に於ける常勝テクニックの指南本のジャンル分けが徹底されていますが、前者の要素は後者にも勿論不可避的に反映されているので政治経済の批判に重点を置いて購読されている方にも勉強になります。以下が植草さんから読者へのメッセージです。

植草さん：TRIレポート読者には、まず年報版である本書を熟読賜り、特に『最強･常勝五箇条の極意』を完全に掌握して頂きたく思う。TRIレポートをご購読されない方も、この極意を掌握することは、必ずプラスになると確信している。そして本書が示した金融市場分析の各論点をよく吟味し、情勢判断の一助にして頂きたく思う。（PP.278-279）

これからは、もっと頻繁に会員制レポートも一般向け書籍の形態で出版されてゆくことを熱望致します。私は誰よりも日本にとって必要な最高の経済学者である植草さんを支持します！

本書は全日本国民必読の書です。