BLANCA エディルフォーレの花嫁 (一迅社文庫アイリス) の感想

物語はヒロインの一人称視点で話が進みます。
最初から最後まで一人称視点で話が進むので、状況説明が続く場面では文章にメリハリが欠ける部分がありました。
しかしながら、この一人称視点で物語が進むということがこの作品の良さでもありました。
ヒロインが何を思い、何に喜び哀しみ、何に感情を揺さぶられるのか、
ヒロインの気持ちがつぶさに分かるので、ついつい感情移入してしまい、
悲惨な境遇に堪え続ける姿には思わず涙が出そうになってしまいました。

ヒロインが出会った軍人さんは、
悲惨な境遇に堪え続けるヒロインの心の内にどんなに遣りきれない暗い感情が渦巻いたとしても、
たった一言で心を癒やし、暖かく包み込んでくれ、
彼と一緒ならもう大丈夫という安心感を与えてくれるような、
そんな包容力のある心優しい大人の男性でした。
（軍人さんの優しさが顕著に表れた『お互いに口にはしない秘密のやりとり』は、
澱んだ心が洗われるかのようで、とても素敵なエピソードでした。）
軍人さんにヒロインが心惹かれていく様子も丁寧に書かれており、
彼に自分を見て欲しい、でも彼とどう接したらいいか分からないと心を痛めるヒロインには
こちらも切なくなってしまいました。

ヒロインや軍人さんの他、ヒロインを温かく見守る大人達や
一緒に成長していくクラスメイト等、出てくるキャラクターみんなが素敵な物語でした。
物語の後半ではもうちょっと二人のやりとりを見たかったなと思うところはありましたが、
ヒロインの成長と恋の行方が丁寧に書かれている、切なくも心あたたまるお話でした。