犬を飼うと12の短編 (ビッグコミックススペシャル) の感想

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参照データ

タイトル犬を飼うと12の短編 (ビッグコミックススペシャル)
発売日販売日未定
製作者谷口 ジロー
販売元小学館
JANコード9784091826831
カテゴリ » ジャンル別 » コミック・ラノベ・BL » コミック

購入者の感想

 巻頭の『犬を飼う』の異様な迫力に圧倒された。
 飼い犬が死ぬ、というどこにでもある話が、驚くほど濃密な、普遍的な事実として描き出されている。
 生きているものが、どんな形で死を迎えることになるのか? 死への道程が、足が弱り始める、前足が体を支え切れなくなる、足が思うように上がらなくなる、寝床で排泄するようになる、と状況が移り変わっていくことで克明に描写される。その老化の進行に対する飼い主夫婦の対処まで含めて、描写は、あくまで具体的であり、一篇のドキュメンタリーを見るかのようだ。40ページそこそこの短編なのに、読み進むにつれ、息詰まるような思いにとらわれる。生まれて、そして死ぬ、という言葉にできない事実の感触が、細密に描かれた絵を通して、間違いなく伝わってくる。
『そして…猫を飼う』、『庭のながめ』、『三人の日々』は、『犬を飼う』と登場人物が共有され連作となっている。続く三作では、死から生の側へと物語の重心は移っていく。穏やかにこれから始まる世界が描かれる。心あたたまる好編である。
 その他の短編でも、殆どの作品で、動物や、山、海等の自然に対峙する人々が描かれ、独特の世界を形づくっている。いずれを読んでも、読者は期待を裏切られることはないと信じる。

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