知識ゼロからの印象派絵画入門 の感想

大橋巨泉著となっています。セミ・リタイア後の彼は、時間もお金もあるので世界の美術館を見て歩くという実に贅沢な老後を歩まれています。理想的な生き方で実に羨ましいですね。
「印象派」と呼ばれる画家の作品展は、日本の美術館における企画展の中で多分一番集客の多いものだと推察できるほど皆に親しまれています。本書もその人気を背景に企画されたものでしょう。

本作は、大橋巨泉の好きな印象派の画家の代表作を取り上げ、それぞれの画家の個性や特徴を分かり易く伝えており、まさしく「入門編」に相応しい説明でした。また取り上げた画家も多彩で作品数も満足しています。
なにしろオールカラーで代表作は1ページに1つ、他の作品は2つほど掲載し、誌面の小ささのハンディをあまり感じさせません。

名画は美術館で実際に対面して観賞するのが、一番理解が早い訳ですが、物理的な制約もあり、なかなか実現が困難ですので、本書のような入門書があれば分かりやすいです。
優れた美術書とは、絵画の選定が良いこと、解説が分かりやすく正確であること、発色が自然であることなどの条件を適えてくれるものだと思っています。取り上げられた作品は何れも有名な絵画であり、解説も過不足ないものでした。

第1章「印象派に影響を与えた画家たち」では、ジャン＝フランソワ・ミレー《晩鐘》、ギュスターヴ・クールべ《泉》、オノレ・ドーミエ《洗濯女》ほかをまず登場させています。
絵画の流れを俯瞰して観るには、これらの作品は避けて通れません。
ベストセラーを多く生み出した幻冬舎です。編集や見せ方の巧さは群を抜いていました。堅苦しさは無縁です。

第2章「印象派の始まり」では、エドゥアール・マネ《バルコニー》、フレデリック・バジール《水浴者たち》、ウジェーヌ・ブーダン《トゥルーヴィルの海岸》、ヨハン・バルトルト・ヨンキント《サン・ジャック教会への道》など、珍しい作品も掲載し、紹介してありますので、入門編とうたっていますが、美術愛好家にとっても満足いくラインナップでしょう。