インド社会とカースト (世界史リブレット) の感想

ゆっくりと時間をかけて丁寧に読んでいけば、著者の言わんとすることはある程度わかる。さらに繰り返して読めば、より理解が深まることだろう。しかし、この「世界史リブレット」というシリーズはそういった読み方をするための本だとは考えにくく、著者の姿勢には大きな疑問符がつくといわなければいけない。特に、最初の2章（「カーストとはなにか」と「カーストの歴史」）は内容が非常に抽象的であるにもかかわらず、素人にも分かるようなかみ砕いた説明がなされていないので非常にわかりにくい。書きぶりに大いには大いに不満が残る。

「インドにおいて、なにか否定的なできごとが起こると、深く検討を加えることもなく、その要因としてカーストを持ち出し、それによって回答をえた気持ちとなることだけは、慎重であってほしい」（86-7ページ）など、重要なメッセージが所々に込められているのに、書き方に難があるためにその良さが大幅に減じてしまっている。残念な本。