あの頃映画 松竹DVDコレクション エロス+虐殺(ロングバージョン) の感想

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参照データ

タイトルあの頃映画 松竹DVDコレクション エロス+虐殺(ロングバージョン)
発売日2013-10-30
監督吉田喜重
出演岡田茉莉子
販売元松竹
JANコード4988105067639
カテゴリDVD » ジャンル別 » 日本映画 » ドラマ

購入者の感想

没後4か月、文藝ムック「大島渚〜<日本>を問い続けた世界的な巨匠」を読んでいて、おやっと思ったのは、追悼を寄せていた多くの同時代の文化人の中に、吉田喜重の名前を見つけた時だ。
御存知の通り、吉田も、そして、やはり同書で、ロングインタビューにて大島を語っている篠田正浩も、大島と共に、かって松竹ヌーベルバーグとして脚光を浴びた映画監督。
相次いで松竹を退社後、それぞれに活躍し、60年代アバンギャルドな日本映画のトップランナーとして名声を博した仲なので、コメントを寄せていても、何ら不思議ではないのだが、ただ、吉田が、活字媒体に何かを書いたり、発言したりするのは極めて稀な事と思えて、驚きだったのだ。

さて、時を同じくして、“松竹のあの頃映画シリーズ”として、吉田の代表作群が廉価化される事になり、「秋津温泉」や「水で書かれた物語」などに加えて、ATG映画として製作された作品たちについても、併せてラインナップされる事になった。
ATG作品にまで拡大しての廉価化は意外な感があるが、「エロス+虐殺」が、お求めやすい価格で再び陽の目を見る事になったのは朗報だ。

今作は、ATGが映画製作に乗り出した初期の作品として、大島の「絞死刑」や「儀式」、篠田の「心中天網島」と同時期に発表され、芸術性の高い初期のATG映画群の中でも、際立って難解との評価が高い傑作。
大正の無政府主義者大杉栄と彼の不倫相手だった伊藤野枝の革命と自由恋愛。結局、どちらにも挫折し、最後は国家によって虐殺されるまでの過程を、史実だけでなく、推測、こうあるべきとの理念、考察を加え、それに、現代の若者たちの頽廃的な観念劇を絡ませての3時間45分もの長編だ。
(ただし、本ソフト収録版は3時間36分、神近市子との名誉棄損、プライバシー侵害訴訟の過程で、2時間45分にまで編集され日本公開されて以降、紆余曲折のうえ、現在、現存する中で最長のロング・ヴァージョンである)。

大杉栄と伊藤野枝が革命と愛の情念に身を焦がす大正期と、若者たちの激動と騒乱渦巻く60年代末の現代、革命とフリーセックスを共通項とするふたつの地点が、幾度も交錯する。

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