東京物語 小津安二郎生誕110年・ニューデジタルリマスター [Blu-ray] の感想

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参照データ

タイトル東京物語 小津安二郎生誕110年・ニューデジタルリマスター [Blu-ray]
発売日2013-07-06
監督小津安二郎
出演笠智衆
販売元松竹
JANコード4988105101890
カテゴリDVD » ジャンル別 » 日本映画 » ドラマ

購入者の感想

実はこれ迄観るのを避けてきた名作が幾つかある。小津安二郎監督の「東京物語」はその筆頭で、家族や人生の答えを知ってしまう様で心の準備に自信が無かったからだ。子供が社会人となり自分の会社人生も節目を迎えたのを機に漸く観たのだが、その判断は正しかったかもしれない。
戦後復興と共に家族の絆が次第に失われ、やがて壊れていく時代変化が淡々と描くストーリーに心が締め付けられる。自分がもう少し若ければ、笠智衆の朴訥で温厚な語り口や山村聰の無表情な演技に対して物足りなさを感じたかも知れないし、原節子の陰のある笑顔の深刻さに気付かずに受け流していたかも知れない。
舞台は昭和28年の尾道と東京。
大家族や家長制度が壊れていく時代変化の象徴が、核家族に別れて日々の生活に追われる子供達、東京の煙突や丸ノ内・銀座のビル群、東京駅や熱海旅館の喧騒等で表現される。平和と戦後復興を謳歌して速足で歩き始めた子供世代と、坂ノ上の雲を目指したものの戦争に破れて失意の親達、そして未だ戦争の傷から癒えない女性達の交錯した人間模様が痛切に綴られる。
小津安二郎監督の独特な演出全てを語れる資格も無いが、低いアングルからの固定カメラの中で動く演者の動線や仕草、そして演者達の正面アップからのカメラ目線が登場人物の本質を深く観客に洞察させる画面の鋭さに繋げている。
また良く練られた脚本は、登場人物達の人物を克明に描いていて、特に戦争で自信を喪った男性と、逞しい生命力の女性の台詞の対比が鮮明だ。男は頼りなく曖昧な言葉で夢想を語り、女は直接的で実利的な現実を語るが、そこには最早免れ得ない家父長制の崩壊があった。
笠智衆と東山千栄子の世の変化を受け入れる泰然自若さ、原節子の美しくも毅然とした佇まい、そして親孝行出来なかった自分を責める大坂志郎の演技には泣かされる。
「いつの世も、お金や儀礼よりも尊厳と真心による人との繋がりを大切にしたい」、そんな当たり前を忘れない為に本作があり、世界が認める普遍的な価値がある。尾道からの瀬戸内の景観が此ほど厳かに感じたのは初めてで、原風景を遺す意義とは単なる歴史保存ではなく、変わる人の営みに対する温故知新、心のアンカー役なのだと改めて得心した。

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