社会的共通資本 (岩波新書) の感想
参照データ
タイトル | 社会的共通資本 (岩波新書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 宇沢 弘文 |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 9784004306962 |
カテゴリ | ジャンル別 » ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 経済学 |
購入者の感想
もともとは数学の専門家だったのが、社会を良くしたいという「正義感から」経済学に転向し、36歳でシカゴ大学の教授になられたという宇沢先生の本になります。宇沢先生の教え子である岩井克人さんの本(『経済学の宇宙』)にも書かれているように、宇沢先生の心は新古典学派にあらず、新古典派およびその後裔であるマネタリスト、合理的期待形成学派について本書でもバッサリと切り捨てています。宇沢先生の言葉を借りれば、マネタリスト、合理的期待形成学派の人々は「反社会的勢力」の最たる人々、ということになりそうです。
本書からも宇沢先生の「社会を良くしたい」という熱い思いが各所からあふれ出しているのがわかります。本書で書かれていることを私なりに解釈すると、外部不経済、つまり市場の内部では評価されない害の存在を改めて認識したうえで、環境問題における炭素税の導入のように、それ(外部不経済)を内部化することが望ましいケースはありつつも、すべての領域に市場原理を持ち込むのはもってのほかだということです。その最たる例が教育、医療分野だということで、つまりモノではなく人間自身に関わる領域ということです。このあたりはマイケル・サンデルの主張とも共通するところがあります。両人とも「正義」とは何かという問題意識があるということです。
岩波新書ということで、全般的にかなり平易に書かれていて、高校生・大学生にも読めるような配慮がなされていると感じました。逆に言うと著者は若い世代に対して強いメッセージを発信したかったのかな、とも感じましたが本書は全年齢層の人が一読すべき本でしょう。
本書からも宇沢先生の「社会を良くしたい」という熱い思いが各所からあふれ出しているのがわかります。本書で書かれていることを私なりに解釈すると、外部不経済、つまり市場の内部では評価されない害の存在を改めて認識したうえで、環境問題における炭素税の導入のように、それ(外部不経済)を内部化することが望ましいケースはありつつも、すべての領域に市場原理を持ち込むのはもってのほかだということです。その最たる例が教育、医療分野だということで、つまりモノではなく人間自身に関わる領域ということです。このあたりはマイケル・サンデルの主張とも共通するところがあります。両人とも「正義」とは何かという問題意識があるということです。
岩波新書ということで、全般的にかなり平易に書かれていて、高校生・大学生にも読めるような配慮がなされていると感じました。逆に言うと著者は若い世代に対して強いメッセージを発信したかったのかな、とも感じましたが本書は全年齢層の人が一読すべき本でしょう。
別の本で医療制度についての論考をみて、もっと新しい書き物を
見たいと思って買いました。
読んでみると、1970年代からの論稿を編集したもののようで、
当初の期待は、かないませんでしたが、しかし、全体に、2010
年の今でも、当てはまる書きものだと思いました。
特に、概論に当たる、序章と1章は、社会に不可欠な資本を、社会
的共通資本と私的資本の2種に概念として分けているところとか、
新古典派経済学は、分配が公正なことは暗黙の前提として議論の対
象から外し、もっぱら市場均衡が効率的な資源配分をもたらすこと
を主張するものだ、という指摘は、大切な視点だと思います。
また、1章は、ソ連崩壊直後に書かれたようで、社会主義の計画経
済は、個々人の内発的動機と矛盾していたのだ、という指摘は、基
本的なものだと思いました。
というわけで、いまなお強力な新古典派経済学について、その基本
的な考え方を批判したすぐれた本だと思います。
書き損ねましたが、経済制度は何か論理的に正しいものを追及する
といった仕方でなく、当該社会の文化的、自然的、倫理的な条件に
ふさわしいものを制度化する形で、作られるのだ、という考えが提
案されています。そして、現代では、自由権を満たすだけでなく、
生存権を十分に満たす形で、経済システムは形作られるべきと、語
られています。
見たいと思って買いました。
読んでみると、1970年代からの論稿を編集したもののようで、
当初の期待は、かないませんでしたが、しかし、全体に、2010
年の今でも、当てはまる書きものだと思いました。
特に、概論に当たる、序章と1章は、社会に不可欠な資本を、社会
的共通資本と私的資本の2種に概念として分けているところとか、
新古典派経済学は、分配が公正なことは暗黙の前提として議論の対
象から外し、もっぱら市場均衡が効率的な資源配分をもたらすこと
を主張するものだ、という指摘は、大切な視点だと思います。
また、1章は、ソ連崩壊直後に書かれたようで、社会主義の計画経
済は、個々人の内発的動機と矛盾していたのだ、という指摘は、基
本的なものだと思いました。
というわけで、いまなお強力な新古典派経済学について、その基本
的な考え方を批判したすぐれた本だと思います。
書き損ねましたが、経済制度は何か論理的に正しいものを追及する
といった仕方でなく、当該社会の文化的、自然的、倫理的な条件に
ふさわしいものを制度化する形で、作られるのだ、という考えが提
案されています。そして、現代では、自由権を満たすだけでなく、
生存権を十分に満たす形で、経済システムは形作られるべきと、語
られています。
~ 筆者は社会的共通資本という考え方を提示し、それには自然環境系・インフラストラクチャ系・制度系の3つの種類があるという。
~~
この本はそれぞれの分野について具体的な例をあげてその意味や意義を論じ、また社会・経済学史の中に位置づけ、そして結語としてあり方を論ずるというスタイルでこれまでの筆者の著作・文献をまとめたものである。宇沢ワールドの入門書というところか。
~~
文は抑揚がおさえられ(ま、経済学の先生だから)平坦ではあるものの、所得再分配において無機的個人を前提し、効率性のみを論じ、公正性について考慮しなかった新古典派経済学者やモダニズムの教祖コルビジェを思想的に批判し、自説や他の優れた思索家(例えばジェイコブス)などの対案を提示する。
~~
新古典派的な理論・演繹的アプローチによる社会資本整備についての政策体系を批判しつつ、農村について述べた第1章、都市について述べた第3章は、多くのプランナーや政策立案者は、これまでの政策の理論的背景への批判も含めて読んで欲しいし、この部分を自分なりに把握し消化することで少なくとも思想的には十分とも言えると思った。
~~
現在長野県の総合計画審議会委員をやっている筆者の「コモンズ」による地方政策革命の理論的背景を知る上でもいいテキストである。~
~~
この本はそれぞれの分野について具体的な例をあげてその意味や意義を論じ、また社会・経済学史の中に位置づけ、そして結語としてあり方を論ずるというスタイルでこれまでの筆者の著作・文献をまとめたものである。宇沢ワールドの入門書というところか。
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文は抑揚がおさえられ(ま、経済学の先生だから)平坦ではあるものの、所得再分配において無機的個人を前提し、効率性のみを論じ、公正性について考慮しなかった新古典派経済学者やモダニズムの教祖コルビジェを思想的に批判し、自説や他の優れた思索家(例えばジェイコブス)などの対案を提示する。
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新古典派的な理論・演繹的アプローチによる社会資本整備についての政策体系を批判しつつ、農村について述べた第1章、都市について述べた第3章は、多くのプランナーや政策立案者は、これまでの政策の理論的背景への批判も含めて読んで欲しいし、この部分を自分なりに把握し消化することで少なくとも思想的には十分とも言えると思った。
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現在長野県の総合計画審議会委員をやっている筆者の「コモンズ」による地方政策革命の理論的背景を知る上でもいいテキストである。~