選挙 [DVD] の感想

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参照データ

タイトル選挙 [DVD]
発売日2007-12-22
監督想田和弘
販売元紀伊國屋書店
JANコード4523215036269
カテゴリDVD » ジャンル別 » 日本映画 » ドキュメンタリー

購入者の感想

いやはや、すごい映画だった。
何がすごいって、見続けるのがこんなにもしんどくて、途中でもう見るのを止めたいと感じた映画はそうそうない。

…などと云うと、けなしているのかと思われるかもしれないが、その実、全くの逆。
「つまらないから見るのをやーめた」というのとはわけが違う。

日本のいわゆる伝統的なフツーの選挙の内情とはこんなにも気持ちの悪い世界なのかと、うんざりさせられる。
何もかもがあまりにも受け入れがたいが、それがずっとこの調子なのか、まだあるのかと気を揉むほど、映画は淡々と続いていく。
見終わった時の居心地の悪い徒労感といったらなく、言葉にもならず、後になってからもじわじわと様々なものが押し寄せてくる。
救いのないバッドエンドストーリー映画の方がまだましというくらい。
だってこれ、本当にこの国で起きたことで、現実なんですから…。
実際にこれまでも長年各地で起きてきたことで、今どこかで起きていることであり、これからも起きることだと思うと、溜息しか出ない。

監督はひたすら自分の気配を消して撮影に徹し、撮り手である自分という存在を画面には一切匂わせない。
所謂ドキュメンタリーともちょっと違うし、観察映画と呼ばれる今までに見たことのない手法で、日本の選挙システムのおかしさをこれでもかこれでもかと存分にあぶりだしてゆく。
そこには監督独自の主観を混ぜない。批判もしなければ、肯定もしない。一切意見を挟まない。だから、ナレーションもないし、BGMも流れない。
判断は完全に視聴者にゆだねられている。
しいていうのならば、「あなた、これを見てどう思います?何を考えますか?」…これが監督から視聴者へのメッセージなのかもしれない。

以前他で見た選挙にまつわる仰天エピソードでは、ある首相経験者の妻は有権者の前で「主人を男にしてやってください、ウウウウ・・・」と頭を下げながら泣けと選対から指示されたが、あまりに恥ずかしすぎてできなかったとか。

小泉人気の絶頂期に、川崎市議補欠選挙の自民党公認候補を追ったドキュメンタリー。
候補者は、東京で切手・コイン商を営む政治のド素人。
公募から自民党公認を得ているので、箸の上げ下げまでベテラン選対に指導され続け、「何をしても怒られるし、何をしなくても怒られる」。最終的には小泉総理の登場もあり、際どい得票差で民主党候補を下して当選する。
候補者は、川崎市内を駆け回り自分の名前を連呼するだけ。少なくともフィルムの中で政策について語るシーンは少なく、候補者が政治的ビジョンを持っているとは言い難い。
彼が小泉純一郎に似ているので、彼の選挙を構造改革・郵政民営化を連呼するだけの小泉型政治の縮図として捉えることは容易だが、海外在住の長い監督の意図は小泉政治よりも、日本人の国民性そのものに向けられている。
かつて、きだみのるが指摘し続けた日本のムラ社会のメカニズムが、川崎市という都会でも部分的に機能していることを監督は丁寧にフィルムに残す。特に選挙活動のディテールは非常に面白い。
・「妻」ではなく必ず「家内」と呼ぶ。フィルムでは、「丁寧に「お」をつけると「おっかない」」というギャグで笑いをとるため、と説明されている。
・握手の時は最後に必ず眼をみる。
・通行人は3秒間しか話を聞かない。だから必ず3秒に1度名前を言う。
・とにかくお辞儀し、名前を連呼し続ける。電柱にもお辞儀。
・老人会の運動会、幼稚園の運動会、地元のお祭りに参加

自民党のドブ板選挙のノウハウと人員を動員して、地盤も政策を持たないズブの素人を当選させることができた。
ただし、自民党が圧倒的支持率を誇っていた小泉時代の地方選挙であり、小泉首相の登場などの後押しがあっても、結果は千票程度の僅差であったことが意義深い。日本におけるドブ板選挙の強さと、同時にそれが有効性を失いつつあることも示している点で貴重なフィルムだ。

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