フィレンツェ―初期ルネサンス美術の運命 (中公新書 (118)) の感想

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タイトルフィレンツェ―初期ルネサンス美術の運命 (中公新書 (118))
発売日販売日未定
製作者高階 秀爾
販売元中央公論新社
JANコード9784121001184
カテゴリ芸術一般 » 美術史 » 西洋美術史 » ルネサンス

購入者の感想

私が初めてこの本を読んだのは学生時代で、まさにフィレンツェに行こうと決心した時だった。そして高階氏の文章に魅せられルネサンスの魅力を満喫できたと同時に知り得た事は、ルネサンスを生み出した自由で進取の気風に富んだこの都市も、実は他にも増して伝統を重んじ、芸術的な洗練という意味では非常に頑なな趣味に固執していたということだ。その一例として紹介されているのが、1401年のサン・ジョヴァンニ洗礼堂の扉のコンクールだ。同業者組合はドラマティックで当時としては前衛的ともいえる作風のブルネッレスキより繊細なギベルティを好んだ。しかし結果的にコンクール制度の始まりは実力主義を根付けさせ、批判精神を培い、職人が競ってさまざまな分野に活動を広げる地盤を築いた。皮肉にもフィレンツェのシンボルとなるサンタ・マリア・デル・フィオーレのドームはブルネッレスキの天才の技が成し遂げた勝利だった。

高階氏はその後フィレンツェ出身の多くの天才達が、この都市から次第に離れてしまうことに目を向けている。何故ならフィレンツェ共和国の、そして何よりもメディチ家の当主であったロレンツォ・マニフィコは、芸術の庇護者というより、外交手腕に長けた画策家であり、彼らを一種の外交手段として他の都市に送り込み、作品の製作に従事させた。その良い例が、バチカンのシスティーナ礼拝堂側面のキリスト及びモーゼの生涯だろう。その理由はパッツィ家の謀反に関与していた法王シクトゥス4世との和解の使者として彼が秘蔵っ子の画家達をローマに送り込んだからに他ならない。しかしそうした彼の政策は芸術家達のフィレンツェからの流失につながり、当時の社会的情勢と相俟ってフィレンツェに決定的な斜陽と衰退を招いてしまう。ルネサンスの入門書として是非お勧めしたい一冊だ。

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中央公論新社から発売された高階 秀爾のフィレンツェ―初期ルネサンス美術の運命 (中公新書 (118))(JAN:9784121001184)の感想と評価
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