新訳 ゲリラ戦争―キューバ革命軍の戦略・戦術 (中公文庫) の感想

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参照データ

タイトル新訳 ゲリラ戦争―キューバ革命軍の戦略・戦術 (中公文庫)
発売日販売日未定
製作者チェ・ゲバラ
販売元中央公論新社
JANコード9784122050976
カテゴリジャンル別 » 歴史・地理 » 世界史 » アメリカ史

購入者の感想

ゲバラの本ははじめて。シンプルで表現力富む文体に、魅了された。理論書のはずなのに、すごい臨場感。実戦から革命の成就を経て、キューバ革命政府の政務の合間に記された本書は、フェルナンド・ロペスの挿絵の力も借りて、ゲリラ戦さなかの森林にいるような気分にさせられる。
「厳正な自己規制」「克己心」をゲリラ戦士に求め、「心底からテロリズムを否定する」ゲバラの高貴で戦術的な精神が、戦場での実体験に受肉したうえで、生き生きした理論に昇華している。経験や実体験から「理論」を引き剥がせないくらい、それは一体化している。「ヒット・エンド・ラン」、「敵こそが武器弾薬の供給源であることを絶対に忘れてはならない」といった戦術・戦略論、組織運営について、またモロトフ・カクテル(火炎瓶)での戦闘、対戦車用の落とし罠の詳述もいい。だが本書の根っこには、長く厳しいゲリラ戦を生きぬくための、生活マニュアルとしての生気が脈打っている。いや、それらはここでは、別ものではないのだ。靴が重要。武器と靴とが大事だと、ゲバラは何度も言及。「眠る時にも敵の奇襲に備えて靴を脱がない方がよい(…)靴は貴重品である。靴一足を持つ者は(…)うまく生きのびる保障を持つ」。靴がないと一歩も踏み出せないのだな、ほんとに。
「ゲリラ戦士のハンモックには、それぞれの兵士特有の体臭が移ることで知られている」、「砂糖は塩と同じく必需品であり、これのない生活は全くの難行である」「食事は日常における唯一のイベントであるので(…)配給量を正確に計り、少しの不公平もあってはならない」など。山野を駆けめぐり、どしゃぶりの雨でびしょ濡れになった若者たちの息づかい、笑い、気だるさがふっと伝わってくる。彼らが若いのか、時代が若いのか、よく分からない。革命成就の高揚感のせいかもしれないが、このエネルギーは何なのか。ゲバラいわく、「戦闘員生活の枠内で、最も興味深い出来事は―つまり、歓喜の絶頂を全員にもたらし、新しい力を吹き込むものは―戦闘である」。非暴力闘争の先の最終手段としての戦闘、その生の力に触れられる。

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