ミカドの淑女(おんな) (新潮文庫) の感想

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タイトルミカドの淑女(おんな) (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者林 真理子
販売元新潮社
JANコード9784101191133
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » は行の著者

購入者の感想

 今では女子学生の袴の考案者ぐらいにしか記憶されていないが、明治時代に「日本一えらい女」と言われ、全女性の憧れの的だった下田歌子。下級武士の娘ながら宮廷に女官として出仕するやその才気によって皇后の寵愛を受け、出世街道を駆け上る。学習院女学部長に抜擢され正4位の官位まで授けられる。年棒5千円で日本一高給取りの女性でもあった。そんな女性を妖婦と名指しする醜聞記事が掲載されたのだから、その反響は大変なものだっただろう。
 すでに歴史に埋没した事件であり人物であるが、作家は資料から人物を立ち上げ明治という時代を生々しく蘇らせる。作品の構成は巧みである。『平民新聞』に載ったスキャンダル記事をこまめにそのまま引用して、記事に語らせる形で物語は進行していく。それにしても現代の週刊誌のスキャンダル記事さえおとなしく思えるほど、どぎつくて攻撃的で美文調の修飾過剰な記事に度肝を抜かれる。これがあの『平民新聞』なのかという驚きがあった。醜聞の相手となったのは、伊藤博文や医学博士三島通良、宮内大臣土方久元などであるが、天皇・皇后の覚えめでたき高級女官にして「良妻賢母」の道徳を説く教育者とのふしだらな関係を暴くことで体制を揺さぶろうという社会主義者幸徳秋水の狙いがあったのだろうか。
 醜聞記事をめぐる関係者の反応が描写されるが、これが出色である。相手となった男たちはもちろん、明治天皇、皇后、側室、宮廷の女官たち、歌子の教え子、乃木希典、日本のラスプーチンこと歌子の愛人であった飯野吉三郎……、各層各界それぞれの立場と性格を映す描写は歯切れよくかつ粘着力があり、心情の襞々、生理的な息遣いまで伝わってくるようで作家の才能を感じた。これらの群像を通して明治の風俗と時代とともにある人間の喜怒哀楽がたしかに読者に届けられる。

林真理子さんは若い頃、好きでしたが、何となく最近は女性週刊紙ネタのようなゴシップな内容ばかりで読んでいませんでした。
が、たまたま古本市で入手した本でしたが、歴史モノはほとんど読んだことのない私にも楽しめました。

明治という時代を生きた一人の女性、下田歌子。その彼女を取り巻く男や女たちの人間模様が、彼女のゴシップ記事を中心に描かれています。
天皇を取り巻く環境、人、明治という時代の軍人、女性…ものの考え方といいますか、明治という時代が伝わってきました。

歴史に興味の無い私にも楽しめたので、歴史のお好きな方にはもっと楽しめるのではないでしょうか?
今までの林真理子さんのイメージが変わりました。本当に本を書く力のある、才能のある作家だと改めて感じました。

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