Kind of Blue の感想

「Kind of Blue」(1959) のような歴史的名盤については語り尽くされているので素人が今さらレビューするのはおこがましいのだが、録音後半世紀もたった今聴いてもやはりその内容の素晴らしさに圧倒される。ジャズに「様式美」や「格調」などというような語句は本来ふさわしくないのだが、このアルバムを聴くとどうしてもそういう表現を使いたくなる。

ビル・エヴァンスが自らライナー・ノートに記しているように、マイルスは既成のレパートリーを一切使わずに、当日持ってきた簡単な曲のイメージ（ドリアンモード）だけをメンバーに見せて、一発で録音に臨んだと言う。以降代表曲となる、マイルスの口癖をタイトルにした ”So What” はこれが初演である。この一発勝負をエヴァンスは、描き始めたら最後、失敗や途中修正が許されない日本の「墨絵」の画法に譬えているのだが、これこそ「即興」を命とするジャズの究極の形でもあり、それをセクステットの集団即興として一気に行うことがどれだけプレイヤーに緊張を強いるか想像もできない。しかも当時からジャズの録音は同じ曲を何takeか録ってbest takeを採用するのが普通だが、一発録りの全てのtakeが聴いての通り、無駄な音がそぎ落とされた一期一会の緊張感と、マイルスの研ぎ澄まされた美意識が溢れる空前絶後の名演ばかりなのである。その張りつめた緊張感ゆえに、このアルバムには普通のエンタテインメント音楽としてのジャズ的快感は希薄であるが、美しく、また難解でもなく、上質な音楽として誰もが楽しめる普遍性を持っている。部分参加のウィントン・ケリーとキャノンボールはまだモード未消化という演奏だが、”So What” や ”Blue in Green” を筆頭にマイルス、コルトレーン、エヴァンス三者の演奏の圧倒的素晴らしさがそれを補って余りある。

ビ・バップからハード・バップを経た20世紀半ばのいわゆる "モダン・ジャズ" は、やはり1959年（昭和34年！）のこのモード奏法による「Kind of

2010年発売のsony/legacyアナログ盤購入を機にここまで購入してきたメデイアで聞き比べを実施してみました。
対象は今回アマゾンにて購入した上記の180Gアナログ盤と
2008年発売のSACDハイブリッド盤、99年発売のSACD初回発売、
通常CDとしては2009年の52枚ボックスのNO10のCDと2006年発売の紙ジャケCD（SICP1206）です。

まずはアナログ盤ですが180G,HQ-180とべったりステッカのついた気合い入ったアピールだけあって
キメ細かな音がします（アナログだから当たり前か・・・）

デジタルと比較して特徴的なのは中音域が生きるもの、つまり管楽器の音色、響きが密度の濃いところでしょうか。逆にシンバル、ベースなどはあまり目立たない印象、聞いてて一番疲れないソースです。

次にSACDですが、まず年代の近いハイブリッド盤の方、ほかの方もレビューであまり良いように書いていませんが確かにやや平板な印象で、後述するCDに比べるとたとえばベースなどは低音域でているのですが
いかにも細い印象です。あとレココレのマイルス本でも書いているように99年版はエコーがかなり利いているのでそれと比較すると奥行とかツライのかも。

対する99年版はSACDシングルレイヤー、無圧縮と最近のユニバーサルのshn-cdのSACDシリーズの仕様とほぼ近いのが面白いです。
こちらはエコーが利いていてブラシなどの感触も強調されてる感じ。
アナログの音を忠実に移し替えようとしてる感じ？やはりハイブリッドよりは聞いていて好ましいです。

cdの方ですが一番新しいプレスものになるボックスセットの中の一枚の方はミックス自体も違うのかいかにも
デジタル時代っぽい音色になります。ひとつひとつの楽器が独立してはっきり聞こえる感じ。おそらく
MP3とかに変換したら一番聞きやすいんではないかと思います。
対して2006年版はアナログっぽさが残っていて聞いてて疲れないカンジ。
前述のマイルス本によると、どうもこの紙ジャケだけ、特別なマスターらしいですが。