ビジネスモデル全史 (ディスカヴァー・レボリューションズ) の感想

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体系的にビジネスモデルがまとめられている。ビジネスモデルの定義は学術的にもバラバラでもあり、その先行研究についても触れられており分かりやすい。ただし、それを実務で使えるか否かは別に話となり、そこまでは求められないか。

体系的に整理されているわけではなく、たんに時系列で並べた事例集という感じ。
たとえば売り方なら売り方の変遷に焦点を当てた章、
作り方なら作り方の章、というように整理してくれると
ビジネスモデル革新の歴史の文脈が見えてくると思うんだが。

ビジネスモデルはそうやって体系的に発展してきたわけではないのかもしれないが、
体系だてる試みをしてほしかったな。

経営戦略全史同様、分厚いソフトカバー本です（使っている紙が厚手ということもありますが）
しかし、余白が大きく（イラスト等が入っている）、実際のところは文庫か新書の文字数とあまり変わらないと思われます
ビジネスモデルを古いものから新しいものまで網羅的に収めようとした意欲は感じられますし、
個別のビジネスモデル研究や、紹介数が少ない本に比べれば、全体を通して俯瞰的に見ることで、ちょっと異なった捉え方ができるでしょう
内容も決して難解なものではなく、取っ付き易いと言えます

一方、その網羅性の高さと簡単さというのは、裏を返せば内容の薄さと言ってしまうことも可能です
それぞれの事例についての文章量は、文庫や新書の2〜3ページ分しかなく、簡単な紹介の粋を出ていません
内容量で言えば、ビジネス系の文庫本で見開き2ページが1項目となったオムニバス本と大差ないため、各項のビジネスモデルの概要説明は、ビジネス雑誌やムック本の数ページの記事のほうがよっぽど詳しく丁寧に書かれている、といったレベルです
これを「全史」と言ってよいものかどうか…

あくまでも概要をさらっとなぞるだけで、全体を通して見る視点に意義を感じる、という読者には良いでしょうが、それぞれのビジネスモデルの特徴を理解する用途には内容量が少なすぎます
またビジネスモデルの何たるかを掘り下げて考察する、といった視点にも不向きな印象を受けました

戦略全史とセットで企画されていたのでしょうし、それが売れたことで実店舗でも平積みで売られていたりしますが、自分としてはかなり期待はずれで、強気の価格設定もあり割高感が否めなかったため星3つです

ビジネスモデルとは？
の定義がたとえあったとしても、恐らく100回聞いたところで頭には入ってこない。

それよりも、本書のはじめに書かれている"ビジネスモデル"フレームワークに照らし合わせながらビジネスを読み解く方が、よほど納得感がある。

ビジネスにおけるターゲットを顧客に限定せず、企業をとりまくステークホルダー全体と捉えること。
この視点の広げ方こそが、ビジネスモデルの本質を理解することに繋がるのだと理解した。

本書の中盤にある「コースの定理」と「ビル・ジョイの法則」のコラムを読んだとき、近年のビジネスモデルに起きている変化とは即ち、ステークホルダーが増え＆変わった、ことではないかと思った。

コラムの中では（この定理と法則が正しいのであれば）

インターネットの登場→サービスの取引コストが激減→企業組織が縮小→本質的に残るのは非定型で創造的な一部の業務のみ
そして、その一部の業務を担うべき優秀な人材ほど、企業の外へ出てしまう。
だから
企業がイノベーションをおこすには、オープン化によって外部者たちとのコラボレーションを実現しなければならない。

と書かれている。

そして、このコラムのあとに3つのクラウド（cloud, crowd funding, crowd
sourcing）が実現したビジネスモデルの革新が紹介され、企業にとっての顧客の位置づけが変わってきたことが具体的に示される。
これらのビジネスを、単なる流行りものとして捉えるのではなく、ビジネスモデルの歴史から捉えたときに初めて、何が起きているのか？を理解することができた。

顧客とは、単なる消費者ではない。
いかにして、顧客を活用するか。
企業と顧客の共存こそが、新しいビジネスモデルを生み出し、イノベーションに繋がるのではないか、そう考えると空想が止まらなくなる・・・

その上で第6章「どうビジネスモデル革新を起こすのか？」。