方丈記 現代語訳付き (角川ソフィア文庫) の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル方丈記 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)
発売日販売日未定
製作者鴨 長明
販売元角川学芸出版
JANコード9784044001094
カテゴリ古典 » 日本の古典 » 古代・中世文学 » 日記・随筆

購入者の感想

電車で揺られて30分、こんな短時間で現代語訳は本読みなら読めるはず。流石、日本三大随筆―異論もあるらしいが―と呼ばれるだけはある。平家物語と双璧をなす和漢混淆文の走りは、現代日本文体へ大いに影響与えたのも頷ける。

熊本で大きな地震に遭った。一度目の震度7を経験し、たとえ震度が1であろうとも、寝ている時に起きればつい目を覚ましてしまうほどのトラウマともなり、東日本大震災の経験者からの助言で翌日にも大きな地震が来ると知れば、再び地震に遭った。この時、私は生まれて初めて、死ぬかもしれないという恐れに見舞われた。初めて死の実感を覚えた。明日死ぬかもしれない恐ろしさとはこのようなものなるやと、少しの諦観の念すら覚えた。心身ともに落ち着いた2年後の冬に、この諦観の念を世に「無常」であると、ある時気付いてから、平家物語と併せて購入した。とりあえず、短い方からとして「方丈記」を読む。

椎名林檎は自身の曲に、「月に負け犬」というものがある。この歌詞には、「好きな人やものが多すぎて見放されてしまいそうだ」、「此の河は絶えず流れゆき 一つでも浮かべてはならない花などあるだろうか ないはずだ僕を許してよ」などといった歌詞が出てくる。極めつけは、「明日くたばるかもしれない」と言うのが出てくる。地震を経験するより前から、いたく共感していたが、地震を経験してその意味を強烈に教えられた。これが死と隣り合わせだと。

そして、この「方丈記」である。冒頭の美しさは、「蜻蛉日記」や「枕草子」、そして「雨月物語」に引けを取らぬ素晴らしさ、美しいと言えども、その無常さ、美しいとは無常と常に表裏一体で、無常であるからこそ美しいのだと、改めて理解することができる。そして、鴨長明は晩年の自身の生活にさえも執着を見出し、悟りの境地へ至りたくば、それさえも捨てなければならないと言いのけてしまう。

これらを通して、もう一度「熊本地震」を被災者の視点から見ると、「方丈記」を聖典にせずにはいられない。この本の影響を受けて、今は古文の勉強を始めた。英文科なのに。この本のおかげで、人生へと悟りに一歩近付けたやもしれぬ。不謹慎な言い方かもしれぬが、何かしらの被災を経験した者こそこの本を読まずして、何を読む。

原文と脚注、現代語訳、解説が付いているのはもちろん、この本には、平家物語や池亭記など、関連する参考資料が豊富。文庫には珍しい詳細な語彙索引まで付いている。著者は『方丈記全注釈』の著者でもある。文庫とは思えないほどの内容であることに驚愕。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

方丈記 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

アマゾンで購入する
角川学芸出版から発売された鴨 長明の方丈記 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)(JAN:9784044001094)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.