バナナの世界史――歴史を変えた果物の数奇な運命 (ヒストリカル・スタディーズ) の感想

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タイトルバナナの世界史――歴史を変えた果物の数奇な運命 (ヒストリカル・スタディーズ)
発売日販売日未定
製作者ダン・コッペル
販売元太田出版
JANコード9784778312961
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 題名からユーモラスな博物学的読み物を想像していたが、かなり違った。ユーモラスどころか、人類とバナナをめぐる壮絶な「闘い」の物語だ。特にグローバルな巨大バナナ企業(チキータ、ドール)による中南米諸国の収奪、殺戮、謀略の歴史は、昨今喧しい「グローバル化」の本質を捉えていて戦慄を覚える。
 バナナはあと20年ほどで絶滅するかもしれない、と著者はいう。バナナが世界的な疫病にさらされていて、まだその解決策が見つかっていないからだ。
 バナナはタネで増えるのではなく挿し木で増える(p13)。いま私たちが食しているのは「キャベンディッシュ」という品種だが、世界中のキャベンディッシュはクローン、つまり遺伝的にまったく同一のものだそうだ。だからいったん疫病が流行ると全滅の危機にさらされる。事実、昔食べられていた「グロスミッチェル」という品種は疫病で全滅し、いまはない。1960年ごろ、グロスミッチェルが全滅する前にかろうじて見出されたのがキャベンディッシュだった。バナナはタネがないので品種改良が非常に難しい植物だそうだ。はやく疫病に強い品種が見つからなければ、ほんとうにバナナが食べられなくなる日が来るのかもしれない。
 意外にも、著者はそれでもいいという(p320)。バナナも地産地消、本来、わざわざ何千kmも船で運ぶ必要のない作物なのだと。たかがバナナで何千人もコロンビア人を殺したアメリカ人にとって、バナナは美味なデザートではあったが、別に主食というわけではなかった。
 グローバル化の本質とは、生きるのための必要不可欠ではなく、破裂するまで膨らみ続けることを止められない人間の欲そのものである。バナナ一本の向こうに繰り広げられてきた世界を思うにつけ、嘆息を禁じ得ない。

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