本当に残酷な中国史大著「資治通鑑」を読み解く (角川SSC新書) の感想

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タイトル本当に残酷な中国史大著「資治通鑑」を読み解く (角川SSC新書)
発売日販売日未定
製作者麻生川 静男
販売元KADOKAWA/角川マガジンズ
JANコード9784047316430
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

総ページ数、実に1万。戦国時代から北宋の建国直前まで1400年に及ぶ
中国波乱の歴史が綴られた歴史的大著、司馬光の資治通鑑。
その分量の膨大さに加えて、編年体という読み難さと内容の苛烈さが影響し
たのか、歴史書としても実用書としても、古くからその存在の重要性が評価
されながら、かつて一度も日本で全訳されたことがない幻の書である。
関連書籍も少ない。

本書では、その膨大な本文及び注釈の中から特に、日本人には到底行うこと
が出来ない、ばかりか理解することも信じることも出来ないエピソードが
枚数の許すかぎり、集中的に取り上げられている。
筆者は「司馬光は書きながら血の涙を流していたに違いない」と述べている
が、自分も読みながらそういう気持ちになった。

中国という地域は、日本とは目と鼻の距離にある隣国であるが、我々日本人
が辿った(穏やかな)歴史とは全く異なっている。異なる民族同士が地続き
で接しているということは、そういうことになってしまうのかと、本書を読
んで改めて認識することになった。

我が国の歴史の中で、目を覆うような惨事としては、比叡山の僧侶や長島の
一向宗門徒が受けた無差別な焼討ち、荒木村重や豊臣秀次一族の受難が思い
起こされるが、あまり比較にはならない。それらを何倍も苛烈、かつ大規模
にしたうえで、執拗に繰り返したのが中国の歴史であると言える。

力ある者の野心や怨恨、そして食料事情の変化は戦乱や飢餓という形になっ
て直接的かつ迅速に人々を襲う。中国の人たちは、なんと困難な道をそれも
長期に渡って歩んで来たのか?同情というより寧ろ、敬服の様な気持ちが湧
いて来る。

本文で引用された明治に活躍した京都大学文学部教授の桑原隲蔵の言葉は極
めて重要である。「支那人をよく理会する為には表裏二面より彼等を観察す
る必要がある。経伝詩文によって、支那人の長所美点を会得するのも無論必
要であるが、同時にその反対の方面をも一応心得置くべきことと思ふ。」

自分が育った日本文化とこれほど違う物差しがあるのか、と痛感した。『資治通鑑』は難しい思想書ではなく、その時代を生きた中国の人たちの振る舞いと結果が細かく記載されているもの。この本は特に「日本人が考える善悪のレンジ」からはみ出した部分を多く紹介している。

日本より広大な土地で悠久の歴史を持ち、いろんな国が興っては衰退していつも人が争っている。確かに残酷な話がたくさん出てくるが、この中で生き延びようと思ったら日本的な思慮や遠慮はおそらく邪魔でしかない。目的は完遂するべきだし、敵は殲滅させなければいけない。さもないと自分や一族が危ない。

描かれているのは約1400年間、ずっとどこかに「信じ切ったら危ない」という考え方があって、それは現代中国にも続いているのだろうな、と想像させる。良いか悪いかはさておき、世の中にはこれだけ極端な考えが存在するのだと再認識する一冊。読み終えると「道徳や倫理とは一体何か」を考えたくなる。

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