違反投稿の通報
239人が閲覧 0件のレス

【 FGO二次創作】ある特異点の終わりの日【 女性向け(鯖×オリキャラ(女))】

がらん #4 - 16.12.16 03:17


ズクン、と心の中が揺れた。
理由は判らない。けれど、泣いてしまいそうな感覚が強いと思う。

「…はあぁあ~…」

思い出した記憶。そこには、確かに征服王やそのマスターが、存在していた。
あたしはただ、見ていただけ。式の時と同じように。
それでも、彼らはあたしのことを知っていた。
見ていただけの、あの頃のあたしを。


「あのさ」


重い空気の中ため息を吐いた後、意を決して言葉をつむいだ。


「教授、このままウチのカルデア、来なっ…いってえ」
「…」


言い終わるか否かで、頭を強めに小突かれた。


「…まぁ、デスヨネェ…」


無言のままそんな暴挙に出た人物、エルメロイ教授にあたしはそうこぼした。
わかりきっていた答えだ。でも、どうしても聞きたかった。たとえ小突かれようとも。


ここは、かつて征服王と別れたあの赤い橋。
あたしが彼らの闘いを見ていた橋のアーチの上。
今度は、征服王のマスターであったエルメロイ教授、もといウェイバーと共に。


「…それを言うためだけに俺をここに連れてきたわけではないだろう?」

一度ため息を落とした髪の長い壮年の男はそうきいた。

「……ん、まあ…。ほら、そろそろ仮初の契約期間も終わりじゃん?」

ちょっと、サシで話したくなったのよ。と苦笑いをして見せる。
そうすればこちらも向かずに呆れたような表情でため息をついて、頭を二度三度振る元ウェイバー氏。

「あんた、いっつもそうだよな。あの時もそうだった。なんでそう誤魔化すような笑い方をするのかね」

「…そもそも、召喚になかなか応じてくれないじゃん」

仮初からの本契約なんて事例は、特殊な事がない限りは不可能なのはもう分かりきってはいた。
このまま残ってってのは、あたしのわがままなのは、わかってるけどさ。とぼやき、一度息をつく。
そしてもう一度、わかっちゃいるのよ。と呟き、でもついねえ、本音がねえ…アハハと続けてしまい、またため息が洩れ闇に消えた。
視線を河に戻し、しばらく眺める。間がもたない。


「あの日」


そう言葉を発したのは、隣にいるキャスターサーヴァントの男。


「しばらくして、突然あんたがいなくなって驚いたんだからな。静観者」


低いトーン、あたしに聞こえるくらいの声でそういわれて、一瞬息が詰まるかと思った。
顔を上げで、視線を隣に向ける。そうすれば、唇を結び眉間に皺を寄せ苦しそうな顔をして、目の前の風景を見下ろしている、大分年をくった少年の姿が確かにあった。


「うぇいば…」
「だからっ…」

その視線は、彼の名をよぼうとしたあたしに向けられた。月明かりの下、その表情は、どこか切なそうにも見えて言葉を失う。
けれどそれもすぐ消えて、一度目を伏せ、すぐに開いた彼はため息をまたついた。

「…いや。まだお前にはわたしと並び立てる程の力を見出せていないから、応じないだけだ」
「え、まじ?」

彼のその言葉に、ぼろっと洩れた声。薄々は勘付いていたが、やはりそうだったのか。と内心へこむ。
そこに追い討ちをかけるように教授はこうも続けた。

「いいかね? わたしは今、諸葛孔明という偉人の依代として顕現しているんだぞ? そこのところをお前はきちんと理解してるか?」

その言葉は、確かにしごくごもっともな正論であり、事実だ。けれどそう言う彼は、かつて見せていた少年の頃の意地を張るときの表情となんら変わりがなかった。
表情とは裏腹に平静を装うとする言葉。それにあたしが噴出さないわけがなかった。

「…っぷふ」
「…笑ったな?」
「っっ~…え~ぇ? 笑ってないよー…っふくくっ…」

あからさまに彼の機嫌を損ねてしまったのはわかっていたが、一度崩壊した口元の緩みはそう簡単には直せない。
むしろ教授のなんとか形勢逆転を狙おうとする姿勢が見え隠れして、さらに笑いに拍車がかかってしまった。もうゆるゆるだ。

「…思いっきり笑ってるじゃないか…」
「いひ、つい…ごめ、む…いふぁい」

謝るタイミングでもに、とほっぺを摘まれた。痛い。
どうやら癇に障ってしまったらしい。笑いすぎたようだ。
その表情は、若干引きつった笑いを浮かべている。

「ライダーを呼び寄せたからといって、調子にのるな」
「あ、なんだ、うらやましいだk、ごめんなさい」

その調子にのって煽ってみたらものすごい形相で睨みつけられた。
このサーヴァント。ライダー、もとい征服王に関して煽り耐性なさすぎではないだろうか。

「うらやましくなんか、」

そこで視線を逸らされ、ちょっといじめすぎたな、と反省したあたしは、うん、ごめん。と謝る。

「けど」

ふと思った事があって、言葉を続けようと口を開く。
怪訝そうな顔でこちらに視線だけ向けた教授は、とりあえずきいてやるという雰囲気であたしの言葉を待っている。

「いつか、教授もウチに来てくれるんでしょ?」
「っ…」

情けない笑い方でそう言えば、彼は目を見開いて固まった。
面食らったとは、こういうことだろうか。
まさかそんな反応をされるとは思わなかったのでこっちもぎょっとして真顔になってしまった。
そしてすぐに彼は顔を背けてしまったが、それによって揺れた髪の間から月の光に照らされて首元が赤らんでいるのが見えてしまった。

「えっ、と…ウェイバー…?」

どうしたのか、ときこうと声をかける。さらに彼は肩をびくりと揺らして口元に手をやっている所作をする。
直ぐ後に、彼はぼそりと。


「…昔の名だ」


と何やら悔しそうな声でつぶやいた。
そこでやっと彼がなぜか照れているという事実にきがついた。
召喚されることを嫌がっているわけではないらしいことは、よくわかった。
あたしは小さくわらって、息をついて、そんな彼に言葉をかける。

「きっと、来てね」

そうすれば、彼は気が向いたらな、とそっぽを向いたまま答えた。



これがあたしと仮初の仲間として行動を共にしてくれたロード・エルメロイ2世との、二人っきりで交わした最後の会話だった。


「今度は、本当の仲間としていっぱい話、したいなぁ」

後に征服王、イスカンダルにぼやけば少し驚いた表情をして、…仲間としてか? と不思議そうにたずねてきた。

「ああいや、友人としても、だけどさ」

そう返せばますます困った表情になって、ううむ、そうか…と言葉を濁していた。
そして一言。

「ヤツも前途多難よのう」

えええ?とあたしは口から率直な気持ちを漏らすしかなかった。

/今年書いた話。時系列としてはFate/Zeroコラボの特異点。
あたし、は「真智」というオリキャラです。
彼女はわりと特殊な存在として設定しました。
Fate/Zero時期の学生ウェイバーを知る人物。
空の境界時期では爆弾犯頃までその世界にいました。
いわゆる巻き込まれ型体質。今回はソロモンにこれまでのFate世界への渡航経歴に可能性を見出され伽藍洞(がらんどう)のある魔術師の作った人形を依り代にわざわざ呼び出し、更にカルデアへ召喚されるように取り計らったわけです。
ちなみに、本人の記憶からは絶対に戻らない存在がいます。
紅茶こと、無銘アーチャー。
彼は夢の中で彼女と邂逅した過去がありますが、夢なので彼女自身は覚えてない設定。
アーチャーには少し心配されてるみたいです。

お察しのとおり、ウェイバーくんはFate/Zero時、彼女にほのじでした。
まあ、本人全然気づいてませんがね。

がらん さんの近況日記

がらん #12 - 16.12.26 02:54
【 FGO】とりあえず人理修復完了【 お知らせ】
したので溜まってる目イメージ絵を再開します。明日辺りからたぶん仕事休みになるし、大掃除終わりしだいペースあげてくかんじで。ではまたあした


がらん #11 - 16.12.25 20:48
【 FGO】第1幕終幕。
幕引きは、とにかく区切りにふさわしいバトルをさせてくれる敵でした。とはいっても、今日は忙しく旦那にバト…


がらん #9 - 16.12.23 21:43
【 FGO】とりあえず
前半に出なかった孔明てんてー(cv.浪川大輔)が登場したので涙が出るかと思った…。最終戦がお祭り&奪い合いイベントになってて、菌糸はほんまようやってくれた…ってなってる。


がらん #8 - 16.12.22 23:30
マーリンきました
報酬の石で10連2回引いたらきました。櫻井孝宏!!マーリン!


がらん #5 - 16.12.17 16:44
【 FGO】メデューサきました
ひっそりと10連課金して引いたらきた…余ったぶん単体召喚したらまた慢心してない王もきました。だから、あたし…


» がらん さんの日記をもっと見る

みんなのSNS

ランキング

みんなのコミュニティ

訪問有難うございます

がらん さんアーカイブス


» 過去ログ
ズクン、と心の中が揺れた。理由は判らない。けれど、泣いてしまいそうな感覚が強いと思う。「…はあぁあ~…」思い出した記憶。そこには、確かに征服王やそのマスターが、…
2017 - copyright© みんこみゅ - みんなのSNS all rights reserved.